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10分後、フィールド上になんとも形容しがたい音が鳴り響く。森の一番高い木の中腹から見下ろしていたレオは木刀を脇に刺し、あたりを伺う。
皆、身を隠しているのか物音は殆ど聞こえない。ある程度の地形を覚え、その場から飛び降りる。通常の枯子族では勿論死に至る高さだが、レオはものともしなかった。
レオ「ルールを整理しておこう」
3時間の間、敵と会ったら戦う、武器はなんでもOK。逃げ出すのは駄目、協力したり、試合放棄も駄目…。
そこまで考えてレオは立ち止まった。
レオ「…おかしい。これなら勝利条件は?
3時間以内に生き残っていた者?
だとしたら誰も動かなければいいだけ。バトルロワイヤルの意味はない」
何が…何がしたいんだ。そう考えていたレオの顔スレスレを刃物が通り過ぎる。
咄嗟に避け、頰を掠ったそれは後方の木に刺さった。
「なんだよ。当たらないのかよ笑笑」
レオ「…」
ケラケラと余裕そうに笑う男を見て、フードを深くかぶり直し攻撃態勢をとるレオ。
自分が弱く見られた上に挑発され、1発灸をすえてやろうと思ったが、兄貴の言葉が頭をよぎった。
"どんな相手だろうと常に冷静であれ''
その時、一度構えた姿勢を自然体に戻し、深呼吸する。レオの行動に不自然に思いながらも男は突っ込んでいく。
「そらよっとぉ!!」
勢いよく降り出した拳は、レオの顔を捉えることはなく、そのままいなされ勢いを使い投げ飛ばされた。
ろくな受け身も取れず、背中を強打した男は痛みに耐え、立ち上がろうとするもレオに阻まれる。
「あ?…はぁ早く殺せよ」
半ば諦めがちに、そう告げた男はその場に力なく横たわった。
「…何を言っている。戦闘不能にするというだけで、会ったやつを殺せとは言われてない。即ちそれは殺さなくていいということ」
それだけ告げ、歩き出したレオ。男は見た感じからにしても明らかに動ける状態ではなかった。
男は悔しそうに唇を噛み締めて、その場に突っ伏していた。
歩いていれば、相手が見つかる…というわけでもなく、ただひたすらにぶらぶら歩きまわっていたがすれ違いどころか、音すらも聞こえないこの状況に不気味さを感じていた。
先程の男のように、切り掛かってきても困るが、誰も来ないことで戦闘放棄とみなされるのもいただけない。
そしてレオは、1つ茂みの奥から走り出す影を見つけたのだった。
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作者名:あげのり | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/raimu2/
作成日時:2019年5月16日 15時