希望の苗を植えましょう (ページ11)

今日:2 hit、昨日:3 hit、合計:1,970 hit

9 ページ11

兄貴が出払って1週間。3日と言われていた遠征もなぜか長く、兄貴が帰って来る様子は見られなかった。

レオ(兄貴…遅いな)

訓練期間、警戒していた最初の頃とは見違えるくらいに兄貴のことを慕っていた。その為か、近くに兄貴がいないのは少しばかり寂しいようだった。
今日も仕事に勤しもうと鉱山に向かうが、近くに主人の姿を見つけ隠れる。

主人「…、…！！………」

レオ(何を話してるんだ…)

音を立てず素早く移動するのはもう慣れたもの。気配を消し、ひっそりと耳をそばだてる。

主人「そうかそうか！！ついにあの豹のアルビノの獣子族を始末したのか！！」

「えぇ。一緒にいる混種の餓鬼について脅しをかければ早かったものです」

レオ(…えっ)

その話を聞いた途端あるへ出しそうになる殺気。咄嗟に抑えるも付き人に感知されたのか目と目が合う。
音を立てずにその場を後にするが、頭の中は混乱しっぱなしだった。

レオ(兄貴が帰ってこなかったのは、そのせい。しかもあの兄貴が勝てなかった理由が俺？)

溢れそうになる涙を抑えてレオは鉱山に一直線に走っていく。
まだ誰にも掘られていない暗いところまで来ると立ちとまり地べたへと座り込んだ。

レオ「もぅ…兄貴はいないのか。それなら、ここにいる理由はもう…」

無いと言いかけたその時、入ってきた穴の方から物音がした。
素早くその方向に向き身構えると目を見開いた混種の奴隷がいた。

「あの人がいないってどういうこと…」

自分より弱そうに見えるが彼も1人の生き物。そこには殺気が含まれていた。
レオはことのあらましを話し、自分はここを抜け出すと宣言した。
彼は目を見開いた後、自分たちのところにきてほしいと言い出した。

ここ、鉱山には枯子族は嫌がり入ってこない為、一種の拠点となっていた。
彼から自分たち混種はここを抜け出すための作戦を練っていて、そのリーダーが兄貴だったと言う。獣子の純血だったが、ここのあり方に不満を持ち協力していてくれたのだという。

「その彼がいない今。俺たちはみんなでやるしか無いんだ」

「だから、彼の一番弟子で強い君にも協力を仰ぎたい」

真剣な彼らの眼差しを間に受け、レオは「Yes」と返事をするのだった。

ただし、体制は整ってはいない。万全の状態にするため、決行は明日の夜となった。夜は枯子達が眠る時間だから…。