深甘チョコレート〈 平野 〉

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周りの女性達の話し声に耳を澄ませる。








特に誰も “ 平野紫耀 ” という単語を


放っている様子はなくて普通の感じだった。








その事実に、ほっと胸を撫で下ろして


目の前に座る担当の顔を見てみれば


何やら意味深な笑顔を浮かべていた。








「 なんですか 」


『 んーや？気にしてんなーって 』


「 そりゃ気にしますよ 」








にやにやと口角を踊らせる彼の事を


じっと睨むように視線を刺す。








でもそれに物怖じせずに見つめ返してくる彼。








しっかりと絡められた視線は


数十秒もの間、ずっと交わっていて


店員さんが来るまで離れなかった。








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「 …わぁｯ、美味しそう！ 」








テーブルの上に置かれた甘そうなパンケーキに


ついつい目が輝いてしまう。








店員さんが “ ごゆっくりどうぞ ” と言い残し


これまた忙しそうに別テーブルへ行くのを待って、


平野さんが口を開いた。








『 バレなかったな 』


「 … 」


『 約束はちゃんと守れよ？ 』








パンケーキを一口サイズに切って


たっぷりとクリームを乗せて口の中に運ぶと、


これ以上無いくらいの幸福感に包まれた。








そんな私を見る平野さんが何やら


意地の悪い事を言っているような気がするけど


今の状態では一言も耳に入らなかった。








『 一口貰っていい？ 』


「 だめって言ったらどうします？ 」


『 ここでキスすr… 』


「 あげます 」








そそくさと彼の分のパンケーキを切り分けると


お皿ごと目の前に差し出す。








不満気味なのか、それとも満足気なのか、


どちらとも捉えがたい表情で


その甘みを口に含む彼。








大きく瞳孔を開いたかと思えば


喉から “ ん〜 ” と感嘆の声を溢れさせた。








『 んまいな、これ』


「 並んだ甲斐、ありました？ 」


『 うん。あった 』








丁寧にペーパーナプキンの内側で口元を拭って


そちらに向けていた皿を返してくれた。








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