検索窓
今日:17 hit、昨日:47 hit、合計:404,513 hit

__ chocolate.8 ページ8

.








彼のいなくなったバーは


いつも来ているものと同じ雰囲気で。








無駄に静寂の大きい私を、落ち着かせてくれた。








今、現実味があるかと問われれば


無いと答える確率の方が高いとは思うけど


不思議と昨日より心拍数は控えめだった。








もう飲む気は無いし、私も帰ろうとした時。








私のスマホのバイブ音が


テーブルに伝染した。








こんな時間に誰からだろうと画面を見ると、


全然知らない番号が映っていて。








普段通り、無視しようと思ったけれど


不意にペンダントの番号が浮かび


有り得るかもしれないと思い、電話に出た。








『 やっと出た 』








音声部分から流れ出る音は、


さきほどまで一緒にいたはずの彼の地声。








寒いからなのか、時折 ふぅ、と息を吐く音がした。








「 どうしたんですか? 」


『 あぁ、忘れ物。届けて欲しくて 』








いつもは固定された動画枠内での彼の声を


飽きるほど何度も聞く為か、


つい癖でもう一度聞きたいと思ってしまう。








動画内ではきっと響かせないであろう


お酒の混じった彼の声は、とても幻想的だった。








「 忘れ物、って腕時計ですか? 」








一通り、彼がいた場所を模索してみて


テーブル端に置いてあった腕時計を見つけた。








『 あーそれそれ 』








それ持ってきて、と


遠慮という概念の欠けらも無い頼み方で


自分の今いる場所を伝えてきた。








出て行ったのはさっきなんだから


自分で取りに来れば良いのに、なんて


担当に愚痴を浮かばせるようになってしまった。








彼は一度、息を吐くと


甘くとろけるような声を落とす。








『 待ってる 』








染み込むように耳に入って来た一言は、


イヤホンで何度か触れた事のある物だった。








その後、すぐに切れた電話。








スマホをポケットの中に入れると


卓上に置いていたペンダントの包まれる


ハンカチを鞄に入れた。








.

__ chocolate.9→←__ chocolate.7



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (487 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
1597人がお気に入り
設定タグ:平野紫耀
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

さくらんぼ&チェリー@サブ(プロフ) - あぐた。さん» わぁぁぁぁぁ!ありがとうございます!! (2020年2月21日 21時) (レス) id: 8fd736f5ec (このIDを非表示/違反報告)
あぐた。(プロフ) - さくらんぼ&チェリー@サブさん» コメント、ありがとうございます。ベテランだなんて…まだ投稿を始めて数ヶ月も経っていない未熟者です。また作品読ませて頂きますね!(^^) (2020年2月21日 1時) (レス) id: b86c6074bc (このIDを非表示/違反報告)
さくらんぼ&チェリー@サブ(プロフ) - いんこです!hit数がスゴい……ベテランさんですね! (2020年2月21日 1時) (レス) id: 8fd736f5ec (このIDを非表示/違反報告)
あぐた。(プロフ) - ゆかさん» コメントありがとうございます。ただいま下書きをしております。公開予定は今週末を予定しておりますので、もう暫くお待ち頂ければ幸いです。 (2020年2月18日 10時) (レス) id: b86c6074bc (このIDを非表示/違反報告)
ゆか(プロフ) - いつも読ませて頂いています!是非新作も読ませて頂きたいのでパスワード教えて頂きたいですか (2020年2月18日 10時) (レス) id: ad4f41f45e (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:あぐた。 | 作成日時:2020年1月25日 21時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。