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平野さんの了解の返事を聞いてすぐに
そこら辺の家具に体をぶつけながら
慌てて彼の元へ行く用意をする。
バレンタインデーが近い事も思い出して
店長に貰ったチョコレートボックスをあげようと
彼のメンバーカラーのリボンを使って包装をした。
深紅のリボンと、淡いピンク色のレースが
上手い具合に交わった後、儚いオーラをまとう。
鞄を引っ掴んで家を飛び出せば
相変わらずの冷たい空気が全身を打って
あまりの低温に身を縮めてしまった。
それでも、早く彼に会いたいという気持ちの方が
夜風の冷たさなんかよりも全然強くて
そのまま彼のいる場所へと足を走らせた。
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冷たい風が頬を切るように走り去っていく。
一歩踏み出す度に、
平野さんに会いたいと思う気持ちが
どんどん大きく膨らんでいった。
これほどまでに、誰かに会いたいと思ったことは
私の短い人生の中でも無いような気がする。
乾燥する空気に目が痛くなりながらも
ただ走っていると、よく見慣れた後ろ姿が
街灯の点る道路に浮かんで見えた。
「 …ッ、平野さんっ! 」
彼の姿が見えたことだけが嬉しくって
つい周りのことを何も考えずに彼の名前を呼ぶ。
しんとした空気に、私の声だけが響いた。
やってしまったと思ったけど…彼は振り向いて
朗らかに微笑んだあと、小さく手を振って
その手をポケットに戻すと私の方に来てくれた。
夜景に広がる彼の淡い茶色の髪の毛が
キラキラと街灯に光らされる。
『 びっくりした、急に電話かかってきたから 』
ドラマ見てると思ってた、と言うと
身体の脇に垂らされている私の手を取って
その暖かい手のひらで握ってくれた。
「 どうしても…言いたいことが、あって…ッ 」
今にも消えてしまいそうな言葉を
早く彼に伝えたくて、手を強く握り返せば
ゆっくりでいいから、と首を縦に振った。
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さくらんぼ&チェリー@サブ(プロフ) - あぐた。さん» わぁぁぁぁぁ!ありがとうございます!! (2020年2月21日 21時) (レス) id: 8fd736f5ec (このIDを非表示/違反報告)
あぐた。(プロフ) - さくらんぼ&チェリー@サブさん» コメント、ありがとうございます。ベテランだなんて…まだ投稿を始めて数ヶ月も経っていない未熟者です。また作品読ませて頂きますね!(^^) (2020年2月21日 1時) (レス) id: b86c6074bc (このIDを非表示/違反報告)
さくらんぼ&チェリー@サブ(プロフ) - いんこです!hit数がスゴい……ベテランさんですね! (2020年2月21日 1時) (レス) id: 8fd736f5ec (このIDを非表示/違反報告)
あぐた。(プロフ) - ゆかさん» コメントありがとうございます。ただいま下書きをしております。公開予定は今週末を予定しておりますので、もう暫くお待ち頂ければ幸いです。 (2020年2月18日 10時) (レス) id: b86c6074bc (このIDを非表示/違反報告)
ゆか(プロフ) - いつも読ませて頂いています!是非新作も読ませて頂きたいのでパスワード教えて頂きたいですか (2020年2月18日 10時) (レス) id: ad4f41f45e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あぐた。 | 作成日時:2020年1月25日 21時