＿＿ Love weather.35 ページ35
.
早く、とでも言いたそうに急かしてくる。
今まで苗字でしか呼んでこなかったから、急に名前で呼べと言われても 難しい話だった。
言おうとするけど、声が詰まってしまう。
“ 俺はAって呼んだし ” なんて
誇らしそうに胸を張ってくる永瀬さん。
上がる心拍数を無理に牽制して、なんとか紡ぐ。
『 …れ…んく、ん 』
そんな私に少し考える仕草をした後、
“ よく出来ました ” と暖かく私の頭を撫でた。
廉「 まぁ、いつか廉って呼んでもらえる日を
楽しみにして待っとくわ 笑 」
とんとん、と髪に触れて、
そのまま離れていく。
一つ年上なだけなのに、この差はなんだろうと悔しくもなったけど 相手が悪かったに違いない。
廉くんは、トクベツな人だから。
このハイスペック人間に選ばれたのが私だなんて
人生の運、全部使っちゃったとか。
廉「 ん？ 」
首を傾げてくる廉くんを見て、そう思う。
はぁ、と溜息を着くと、廉くんはびっくりしたように瞳孔を開いて 何事かと私の表情を確認した。
『 廉くんって、イケメンだよね 』
廉「 なんやねん急に 笑
はｯ！…もしかして早くも嫉妬した？ 」
『 ………部活行ってくる 』
廉「 なぁ嘘やって！今のは冗談やからｯ！ 」
冷めた目で彼を見た後、保健室を出ようと体の向きを変えて歩き出すと 自然と腕を掴まれる。
“ 部活に行ってくれるんは嬉しいねんけど… ”
そう聞こえて。
“ 今日くらい、俺と一緒におって ”
切ない音を響かせた廉くんの声が耳に触れる。
この声色に根負けしてしまった私は、廉くんの方を振り向いて、腕を掴んでいた彼の手を握った。
『 今日だけですからね 』
廉「 もちろん 」
強気になって言ってみれば、満足気に微笑む。
私は再び廉くんの手に引かれて保健室の窓際に向かうと、私達を祝福するような夕日が目に映った。
多分、この夕日は一生忘れない。
この澄み渡ったオレンジ色の空の下で、
私は幸せを噛み締めた。
.
『 淡い恋日和 』
〜 完結 〜
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 837人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
あぐた。(プロフ) - Sさん» コメントありがとうございます。afterstoryは今、下書きをしておりますので、しばしお待ちください！ (2020年1月28日 22時) (
レス) id: b86c6074bc (このIDを非表示/違反報告)
S(プロフ) - 完結おめでとうございます！やっと付き合った2人のラブラブなafterstoryも気になります！ (2020年1月28日 19時) (レス) id: a50c63b20c (このIDを非表示/違反報告)
あぐた。(プロフ) - 箱推しティアラさん» コメントありがとうございます。更新、頑張ります！ (2020年1月25日 1時) (レス) id: b86c6074bc (このIDを非表示/違反報告)
箱推しティアラ(プロフ) - おもしろいし、この作品好きです！読みやすいですよ。更新頑張ってください！ (2020年1月25日 0時) (レス) id: 0d9bac845e (このIDを非表示/違反報告)
あぐた。(プロフ) - さちままさん» コメントありがとうございます。ただ書いているだけで全然語彙力や文章力が無いので…そのように褒めて頂ける事、とても光栄です！ (2020年1月22日 18時) (レス) id: b86c6074bc (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：あぐた。 | 作成日時：2020年1月19日 19時
