淡い恋日和〈 永瀬 〉

＿＿ Love weather.4 ページ4

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優太「 A、これ出した？ 」








優太が私にヒラヒラと見せてきたのは、
志望理由書の下書きだった。








大学へ進学するにしろ、就職一択にしろ、志望理由書は卒業する上で 絶対に書かなければいけない物。








確か、下書きの提出は今週の水曜日。








あと二日しか無かった。








『 あー、そういえば書いてない 』



優太「 もう何書いていーか、分かんねぇ… 」








まっさらの志望理由書の下書きを机の上に置いて、ガシガシと頭を掻く優太を見て 激しく共感する。








志望理由書なんて…








進路も確実に決まっていないのに、
書けるわけがない。








先生は、この時期ではもう遅いとか言ってるけど。








三年生のゼロ学期とか。








そんな事言われたって、まだ社会人になるって実感湧かないし 現実味すら帯びてないんだから。








でも、書くしかなかった。








『 ゆーた、何書くの？ 』



優太「 まだ本番じゃねぇし…てきとー？ 」



『 うわｯ、最低 』



優太「 Aだって真面目になんか書かねぇ癖に 」








お互いに志望理由書を放ったらかして、スマホをイジりながら 不毛な言い合いを繰り広げる。








すると、不意に優太が、








“ そういや、この前 保健室行ってたよな ”

なんて思い出したように言った。








怪我をしたから手当をして貰いに行ったんだと説明をすると、納得のいっていない顔をした。








“ 永瀬って奴は？ ”








やっぱりそこか、と溜息が出そうになる。








優太は何気に私の事を気にする。








気にしてくれるのは本当に有難い事なんだけど、
ちょっとばかし 重いんだよね。








『 いたよ？なんなら、手当してもらった 』



優太「 へぇ、やっぱイケメン？ 」



『 まぁ、整ってはいた 』








唇を器用に丸め込んで、片方の口角を釣り上げる。








優太がよくやる顔。








その顔をした時は大体 何か考えていて、話しかけてみても 大抵が空返事だったりする。








今度は何を考えてるんだろう…
察しはつくけど。








どうせ噂の、永瀬廉さんの事だろうな。








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