最強な弟。フツーな兄。

拾玖 ページ22

東京校には凄く優秀な反転術式使いがいた。そういえば、俺と同い年で交流会にいた気がする子だった。


「五条A……。あぁ、悟の片割れ？」
「片割れだなんてそんな……俺なんかがおこがましい」
「…似てるね、悟と」


それだけ言って、彼女は俺に術式をかける。

瞼が重くなってくる。高専時代に何度か治療されたことはあるが、やはり慣れない。この感覚は。慣れたくもない。


・

結局、4時間くらい爆睡した。

呪力回復には睡眠が1番だ。カツカツだった俺の呪力はかなり回復してきたらしい。頭ももうフツーに痛くない。




俺にあてがわれた部屋は生徒が使う寮の一室だった。急だったために仮住まいらしい。ちゃんとした家は高専が準備してくれるのこと。住み心地とか悪くないから別にいいけどね。


「はァ……」


布団の中でため息をつく。たった一日でこんなにも環境が変化した。今までのツケが回ってきた感覚。

家のことを全部アイツに押し付けて遊び歩いてた罰か。



────ごめん、“悟”



本当に死を覚悟したあの瞬間、最後に頭に浮かんだのは結局アイツのことだった。
自嘲してしまう。何様のつもりだ。俺に謝られるほど、アイツはヤワじゃない。俺に守られたり、庇われりするほどアイツは弱くない。俺と違って、優秀で最強だから。



・

『A様はやはり悟様に比べると……』
『華も能力も、普通でいらっしゃいますよね』

・

『五条の双子って聞いたのに案外普通だな』
『な、期待はずれ』

・

『お前は所詮悟のスペアなんだからな』
『悟の邪魔だけはしちゃダメよ』

・




『普通の生活って楽しい？俺を見捨てる代わりに手に入れた生活って』




・




それが、そんなに悪いことだろうか。

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