最強な弟。フツーな兄。

捌─side伏黒 ページ10

──見覚えがある


そんな印象を受けた。

目の前にいるこの男は大きな欠伸をして「俺帰っていい？」とボヤく。その長い手足を持て余しているような立ち姿にピンと来た。



五条悟に似ている。



思えばサングラスの奥にある瞳の色も普通は見慣れない青色だった。前髪が長いから気づかなかった。


「ん？なんか落ちたよ………ってゲッ…」


虎杖が抱える女子生徒から落ちた“呪物”を見て彼は思いきり顔を顰めた。その顔も少し似ているような気がする。


「これ特級でしょ……“両面宿儺”じゃない？」
「の、一部ですよ」
「りょうめ…？」
「言っても分かんねぇだろ危ねぇからさっさと＿＿」


俺がそこで言葉を途切らせたのは隣にいた男が急に臨戦態勢を取ったから。恐ろしいまでの呪力が彼のまわりを取り巻く。

「来る！！」

天井が歪んだのが見えた。咄嗟に俺は虎杖を突き飛ばす。教師の男は男子生徒を向こう側に投げ飛ばした。優しくしている場合ではない。


「伏黒！先生！」


ラグビー場にいた2級の呪いが落ちてきた。
瓦礫で視界が遮られて、動揺した途端呪いの腕に捕まる。

「『鵺』」

術式が完成する前に壁に打ち付けられ──そうになる寸前で男が俺と壁の間に入った。「いってぇ！」と背中にいる男が叫ぶ。庇われたこの男に。


「おい！！」


虎杖の声が聞こえたが、俺たちは再度壁に打ち付けられて、とうとう壁が壊れた。宙に投げ出される。


「マジで殺すぞ。テメェ」


男は空中の一瞬で体勢を整え、構えていた弓矢を放った。真っ黒の矢が真っ直ぐに飛んでいくところまでは見えた。

地面に打ち付けられる。


「ゲホｯ」

玖→←漆

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