◆Dolcissimo[墓守/チーズ] ページ5
どこから漂ってきたのか、慣れきったはずの甘美な香りが鼻腔を刺激する。
幸せの甘いキャンディ工場。しかしそれがユートピアと言えるのは、中に居ればの話。
1歩出て振り返ると、チョコレートはマグマのように煮えたぎり、お菓子の森は暗く先行きが見えない。全てが禍々しい印象を与えた。
あそこに残るのは楽かもしれないし、何人かがそれを選んだ。でも、夢からはいつか覚めなければいけない。ユートピアから離れるにつれて、ぼんやりとしていた思考も元の形を取り戻していった。
そう、私にはやるべきことがある。
「なぁ、どこに行くんだ?」
軟弱なチーズの声。そういえば、ここへ私を誘ったのは彼だ。ここで生まれ育ち、ユートピアしか知らない彼は本当に良く細部まで案内をしてくれた。
その時の嬉しそうな顔を思い浮かべたせいで、引き留める彼の腕なんて引きちぎって行ってしまえばいいのに、私にはそれが出来なくなってしまった。
「私は、外の世界でやらなきゃいけないことがあるから」
「そ、それって…僕やケーキよりも大事なのか?」
うん、と小さく呟いて後ろを見た。
アンドルーの瞳からは、大粒の涙が零れていた。クラクラとする様な香りがより一層強くなる。
「ごめんね、アンドルー」
「なんで…そんなの嘘だ、嘘だ…」
それは決して社交辞令なんかじゃなくて、彼を外に連れて行けない事に対する心からの謝罪。
彼が怯んで手の力を緩めた瞬間、私は出口へ向けて走り出した。
やっと外へ、外の世界に戻れる!
森の終わりは、すぐそこに迫
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瑠璃(プロフ) - ステラテスさん» ありがとうございます!早速リクさせてください🙇♀️日を蝕む者で夢主がイタカに反発したけど敵わなくて逃げたけど結局捕まって監✘禁されてしまうみたいなお話が見たいです!コメント再書き込みしてます💦改めて更新頑張ってください! (7月14日 17時) (レス) id: b3de71fca2 (このIDを非表示/違反報告)
ステラテス(プロフ) - 瑠璃さん» コメントありがとうございます、そう言って頂けて嬉しい限りです!これからもマイペースながら、ゆるりと更新して行きたい所存です。もちろんリクエストも受け付けていますので、なんなりとお申し付け下さい! (7月11日 21時) (レス) @page13 id: 6c8573e34b (このIDを非表示/違反報告)
瑠璃(プロフ) - こんばんは、夜分遅くに失礼します。主さんの小説が目に入ったので読んでみたらとても面白かったです!お体に気をつけて更新頑張ってください!それと、リクエストは受け付けていますでしょうか…? (7月11日 1時) (レス) id: b3de71fca2 (このIDを非表示/違反報告)
ステラテス(プロフ) - 葦織さん» コメントありがとうございます!悲しい方に走りがちですがそう言って頂けるととても嬉しいです!ありがとうございます。 (2021年5月12日 0時) (レス) id: 6c8573e34b (このIDを非表示/違反報告)
葦織(プロフ) - 悲しいけど好きです(´;ω;`) (2021年5月10日 0時) (レス) id: 2d3ed3418a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ステラテス | 作成日時:2021年5月9日 18時