BLACK. (ページ6)

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Part 6 ページ6

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『財布』

座った時に気がついた、

隣に置いてあった財布。

手に取ると、ずっしりと重くて

凄い大金が入ってそうな予感がした。

上を向くと、二つの星が見えて

ふと前を通ったカップルが空を見て

私達みたいだ。何て惚気てて、

片方の星を消すように

空に向かって煙を吐いてやった。

随分と性格が悪くなったなぁ、何て

乾いた笑いが零れた。

都合の良い女でもいいから、

今は一人にはなりたくない。

「あ…財布！」

いきなり横から聞こえた声。

横を向くと、サングラスを掛けた男が

息を切らしながらこっちを見てた。

『…これ、ですか？』

「ありがとうございます」

財布を渡そうと、手を伸ばしたら

二人の触れた手。

電撃が走ったみたいビリッと来て、

気付いたら男の胸の中にいて。

少しキツい香水の匂いが

今の私には心地良かった。

手を引かれて、どこかに連れて行かれてて、

黒く染められたおとぎ話みたいで

正直、ドキドキしてた。

エレベーターに乗ると

急に静かになる空気。

何だか少し気まずいけど、

何故か居心地は良かったんだ。

横を見てみたら、綺麗な横顔が見えて

少し透けて見える目が私を捕らえて

少しニヤッと笑った男は

繋いだままだった私の手を引っ張り

触れるだけのキスをした。