16.【蛯名ハルト】 ページ16
蛯名が三番ゲートへ着いた時にはすでに、他の班員たちは皆小隊に別れ、準備を整えていた。
「ハルトちゃん、こっちこっち」
先輩の
「あれ、武器何にも持ってないじゃない」
蛯名も小声で囁き返した。
「大丈夫です。必要ないので」
班長の
「手短に済ませるぞ。無論、人質の安全が第一と思え」
すかさず蛯名は手を挙げた。
「班長」
「何だ」
「犯人の立て籠もったビルの破壊を、僕に任せてくれませんか?」
「よし、任せる」
ほとんど間髪入れずに波貴は云った。
「そうすると……陽動は唯瀬、白縫で行け。後はまあ……あれだ、皆で『お母さんが泣いてるぞー』とかやろう」
ここぞという時に脱力するのは、この班長の愛すべき欠点であり、美点だ。
士気を高めた一行は、倉庫街を目指す。
○
「そ、そこの犯人ッ..!! おッ、大人しく投降してください…!!」
この声は
蛯名は、スニーカーの紐を結び直し、つま先を幾度か打ち付けた。ダンサー時代のジンクスというやつだ。
犯人の立て籠もっているのは、倉庫街の釣具屋の二階で、主人の居ない間に、犯人と鉢合わせになった女性が、人質に取られているらしい。
裏手から、公由たちのいる正面を目指す。
一度立ち止まり、髪の中に指を突っ込んで�惜きまわした。これで少しは、錯乱した『人質の夫』に見えるだろうか。
班員の制止を振り切り、建物の前に躍り出る。
「てめえ、何だコラ、こいつが死んでもいいのか!」
「美代子! 大丈夫か!」
ちなみに名前が美代子かは知らない。
「お願いします! 妻には手を出さないでください!」
「動くんじゃねえつってん◎▲〜☆□!」
完全に、クスリ中毒者の類だ。
そのままふらふらと近寄り、玄関脇の壁に右手を押し付けた。
「……死んじまえ」
蛯名の触れた箇所から、まるで早送りで風化していくように、コンクリートがさらさらと崩れていく。数秒経たぬうちに、建物はぐらりと傾き始めた。
「今ですッ!」
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えりしあ(プロフ) - 終わりました (2016年8月5日 1時) (レス) id: a9855b5ade (このIDを非表示/違反報告)
えりしあ(プロフ) - 更新します。敵の幹部キャラ出しますのでご了承下さい (2016年8月5日 1時) (レス) id: a9855b5ade (このIDを非表示/違反報告)
月八(プロフ) - Nuu.さん» ああ・・なるほどw(( (2016年8月3日 20時) (レス) id: a848845adb (このIDを非表示/違反報告)
月八(プロフ) - 更新終わりました (2016年8月3日 20時) (レス) id: a848845adb (このIDを非表示/違反報告)
Nuu. - 月八さん» 誰か消してるかなと微かな希望を持ってましたすみません。 (2016年8月3日 19時) (レス) id: 2d5a48ba4c (このIDを非表示/違反報告)
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