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震えも、涙も、自分の意思では止められない。
ダメだ、泣きたくないのに。
堪えきれなかった涙が、ポロっと目からひとしずく落ちたとき、目の前の棚が大きな音を立てて倒れ、近くに置いてあったカメラもぶつかって飛んで行った。
棚の後ろから見えるのは、人の影。
「お前…もう限界や…その汚い手ぇ離せやコラ…!」
混乱が止まらない。
埃が舞っていてはっきりと姿は見えないが、この声は間違えようがない。
光に反射して、少しずつ見えてきた。
1人だけ立ち上がっている影、この人が棚を倒したのだろう。
そして、その横にも4つの影。
A「え…なんで…?」
侑「手ぇ離せ言うとんのがわからんのかい!」
今にもつかみかかってきそうな侑を、隣で北さんとりんくんが抑えている。
「あーあ。交渉決裂やなぁ」
銀島「いや、どうせ俺らが耐えとっても約束守る気ぃなんかなかったやろ」
「分かってんのやったら、もっとはよ助けてあげたらええのに。
見てや。こんなカッコにされて、震えて泣いてるんやで?」
北「それはお前らのせいやろ。責任転嫁したらあかん」
「同意の上やったのは、そこで聞いてたやろぉ?」
治「あんなん同意やのぉて、脅迫やろが」
角名「今回ばかりは侑がやらなかったら、俺がやってた。
早く手離せよ」
みんなが、目の前にいる。
ここにいるはずのない、守っていたつもりの相手がいることに混乱して、涙が止まる。
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作者名:智紀りょう | 作成日時:2023年2月9日 14時