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男は先ほどの地図を、あたしの前に落とした。
「ほら、どの赤丸にする?
いっぱいあるから選び放題やん」
あたしのプライドと、守りたいものを守れないの、どっちを取るんだ。
口を噛み締めて、今まで積み立ててきたものが崩れる音を聞く。
「俺らがさぁ、車で迎えに行ったとき、Aちゃん携帯握ってたやん?
ちらっと見えたけど、LINE画面開いてたやんな」
いつの間に見たんだ、と男をにらむ。
「そんときの気持ち、忘れてもうたん?
やっぱり、あかんから代わってってお願いする?」
胸ぐらをつかまれて、持ち上げられ、挑発的な目で見つめられる。
さっき床に押し付けられたときに擦れたのか、右側の額から血がにじんでいるのが分かった。
A「…あたしが、……ここで遊びます」
「えぇ?イヤイヤやったらええねんって。
嫌がってる人と遊んでも楽しくないやんか。
…まぁでも、Aちゃんが、お願いしますどうしてもわたしと、って言うんやったら」
にやりと口元を歪めて、胸ぐらを離される。
重力に従って、床に落ちる。
当たり前だが受け身も取れず、直に振動が伝わってくる。
A「ゔっ…」
「ほらぁ、どないする?カメラに向かって言ってや」
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作者名:智紀りょう | 作成日時:2023年2月9日 14時