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久しぶりに目にした景色は、無機質なコンクリートに何者か分からない敵。
返事をしたくても、のどが乾燥して、張り付いたようになり、うまく声が出せない。
「あぁ」と察したような男は、水分を持ってくるように手下に指示を出した。
腕を引っ張り上げて起こされ、水を飲まされる。
「だいぶ弱ったなぁ。大丈夫？」
A「…あなたたちは、何がしたいんですか」
「えー、まだ元気そうやねぇ。安心やわぁ」
質問に答える気はなさそうだ。
腕を縛られている状態だと、姿勢の維持が難しい。
ずっと同じ姿勢で過ごしていたからか、体が固まっている。
「そんなことより、見てやあれ」
男から指をさされた先に目をやると、1台のカメラが設置されていた。
「可愛く撮ってもらおな」
あたしの背後に回った男に、顔を掴まれて、カメラの正面に固定される。
「でもAちゃんはカメラ回されるの、慣れとるよなぁ。
試合とか放送されるんやろ？」
あたしがなにも返事をしなかったからか、男は一瞬真顔になり、あたしを床に押し付けた。
押し付けられた衝撃で、少し視界が歪む。
「へぇ、お返事もできんくらい、俺らと遊ぶのイヤなんやなぁ」
屈したくない。
簡単に思い通りにいかせたくない。
まだ、あたしの中にはそんな気持ちが残っていたのだと思う。
体重をさらにかけられて、床に押し付けられている右側が軋む。
「…ほんなら、快く俺らと遊んでくれる奴にチェンジしてもええんやで」
男は、「他の奴でも、Aちゃんにダメージは与えられそうやし、むしろそっちの方がええかもな」と吐き捨てるように言った。
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作者名：智紀りょう | 作成日時：2023年2月9日 14時
