スイートショートストーリー【JUMP】

海のキス《Yuya》 ページ9

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月に照らされた海には、昼間とはひと味違った魅力がある。


視界の右側に捉えた雄也の髪が、ふわりと風になびいた。


潮の香りをいっぱいに吸い込んで、彼は微笑む。



「海だー！」



叫ぶ私の手をとって、「海だー！」と繰り返す。


ふふ、おちゃめさん。


ワイルドな見た目とは裏腹に、可愛いところがある雄也。



「雄也、お仕事終わりなのに運転ありがとね」



素直に感謝の気持ちを伝えたら、



「いいの。俺がAと一緒に海来たかっただけなんだから」



そう言って、私の頭をぽんぽんとたたく。


雄也の大きな手が、優しさが、くすぐったくて嬉しくて。


きらきら輝く海を見つめて、彼の名前を呼んだ。



「雄也、」


「ん？」



私より背の高い雄也が、首を傾げて覗き込んでくる。


私は、少しだけ開いた彼の唇めがけて自分の唇を押し当てた。



「ん、！」



雄也の唇の端から驚いたような声が漏れて、目を開けて見つめた先には、案の定彼の驚いた顔があった。



「ちょ、Aそんなんどこで覚えてきたの。…マジびっくりした」


「えへへ、だって雄也がかっこいいから、しちゃった」



ぺろりと舌を出すと、自身の手で口を覆った雄也。



「…かわい」



照れているからなのか、彼は私に聞こえないようにぽつりと呟く。


だけど、ちゃんと聞こえちゃった。


恥ずかしがりやの雄也のために、聞こえないふりをしてあげる。


その代わり今日は、めいっぱい甘えさせてね？


そんな意味を込めて、雄也の腕に飛び付いた。




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