スイートショートストーリー【JUMP】

キミの風邪薬�　�Kota》 ページ39

.




玄関のドアが開く音がして、廊下を歩く心地よいリズムが聞こえる。

コンコン、と小さいノックをして、ゆっくりと部屋に入ってきた。



「あ、起きてた」



風で乱れた髪を直しながら、宏太は呟いた。

ゆっくりと歩いてきてベッドの脇に腰をおろす。



「だって、宏太が来るって言ったから」

「寝て待っておけばいいものを」

「いいじゃんか」



唇をつんと尖らせると、宏太は私の頭に手を乗せてぽんぽんと動かした。



「はいはい、拗ねないの。

あ、これ」


急に思い出したように、左手に持っていたコンビニの袋を私に渡す。



「……！プリン！」



袋の中身を見て手に取った私からひょいとプリンを奪って、また袋の中に戻した。



「それは食後な。今はこっち」



そう言って、ペットボトルのスポーツドリンクを手渡してくる。



「はーい。でも食べるもの何にもないよ」

「心配ご無用。俺がちゃーんと作りますから」

「宏太が作るの！？」

「そうだけど？」



目を丸くする私を見て、宏太はにやっと笑った。



「じゃあ、キッチン借りまーす。

あ、Aはちゃんと寝とけよ？また熱上がったら困るから」

「うんー…」



布団に潜って、宏太から貰ったペットボトルを頬に当てる。

冷たくて気持ちいい。


……でもやっぱり心配だよ、

宏太は料理が下手だもん……。




.

キミの風邪薬�◆�Kota》→←やさしいココア《Keito》

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す