スイートショートストーリー【JUMP】

ヒトメボレ《Kota》 ページ29

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……きれいだ。


顔が整っているのはもちろんのこと、纏うオーラがその美しさをよりいっそう際立たせている。


きっちりセットされた髪、スッと通った鼻筋、血色のいい唇。


座っていてもわかる高身長とスタイルの良さ、それによく似合うネイビーのスーツ。


それから、閉じられた瞳。



「……！！」



いきなり開いた瞳は、彼を見つめていた私を捉えた。


突然のことに驚いて、目を逸らそうとする。


……が、逸らせなかった。


鋭い視線を直に浴びる。



「……っ、あの、」



非難されると思って、私は声を絞り出した。


すると彼は、目がなくなってしまうくらいに細くして



「僕の顔、何かついてます？」



にこっと微笑んだ。



「いや、あのっ、見惚れちゃって」


「…………へ？」


「あ……何言ってるんだろう、あはは……」



無意識に口走っていた。


初対面の女にこんなこと言われたら、気味悪がるに決まってる……。



「はは、照れるなあ。そんなこと言われたことないから」


「え」


「俺、あなたみたいな人好きです。全部顔に出てる」


「なっ…！」



彼は、ジャケットの内ポケットから小さな紙を出し、私の手に握らせた。



「俺、薮っていいます。今度お食事でも」



名刺だった。


そこには、誰でも1度は耳にしたことのある一流企業の名前と、彼にぴったりの名前が書かれていた。



「"薮宏太"さん……」



ぺこりとお辞儀をして去っていく彼の背中を見ながら、私はその名前を何度もなぞったのだった……。




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