ゆるゆる短編集 6【芸人】 (ページ35)

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ラニーノーズ山田ページ35

Aside

『なんでこんなところにまでびっちり書くねん…！』

全力で背伸びしながら黒板を消しつつ一人でぶつぶつと愚痴る。

身長なんかちいちゃい方が可愛らしくてええやんか！なんて強がってる私も、日直が回ってきては仕事である黒板消しの度に流石にこの身長が恨めしくなる。

『あーもーほんまに届かへん…！』

と、その時手から黒板消しの感覚が消え、後ろに人の気配を感じた。

『…っ、なぁーんだ健人か』

山田｢なんだってなんや｣

『少女漫画的展開が遂に私にも来たと思ったのに、相手が健人じゃねぇ？』

山田｢うっさいわチビ｣

『あっ！…それは禁句やぞ！』

思いっきし地雷を踏みやがった健人は私がどんだけ苦労しても届かなかった上の文字をいとも容易く消した。

山田｢ほら、これでええか？｣

『あ、うん。ありがとう』

山田｢毎回毎回大変そうやなぁ、チビやと｣

『やからチビチビ言うな！一言多いねん！』

山田｢ええやん、チビ。可愛いし｣

なんやそれ、なんもフォローになってへんねんけど。

そう言おうとしてやめた。

なんとなく、健人が恥ずかしそうにしてるように見えたから。

…気のせいかもしれんけど。

『ちいちゃい私とでっかい私どっちが好き？』

山田｢“でっかい私”が全然想像出来ひんけど｣

『うるせーな』

山田｢まぁ、でも｣

健人が優しく私の頭に手を乗せた。

山田｢俺は今のAが好きやで｣

『…そ？

ほんならこれからもちいちゃいAちゃんで行かせてもらいますわー！やから日直の時はお手伝い宜しくな？』

少し何かを考えるように私を見詰めた後｢しゃーないな｣って優しく微笑んだ。

『ま、あっという間に健人の身長なんか超えてまうけどな』

山田｢いや無理やろ｣