ゆるゆる短編集 6【芸人】 (ページ25)

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四千頭身石橋ページ25

石橋side

石橋｢あ…｣

『ん？あれ、バシくん。部活中じゃないの？』

石橋｢ちょっと忘れ物、しちゃって｣

『そっか』

放課後、みんな帰宅したり部活行ったりして誰も居ない教室にAちゃんが窓の外を眺めながら独りで居た。

オレンジ色の光がAちゃんを包み込んでて、幻想的で綺麗だな…と思ってしまった。

あれ、明日提出のプリントどこやったっけな…。

全然見付からなくて椅子に座って机の中をゴソゴソと探る。

『振られちゃった』

石橋｢えっ？｣

『振られちゃった、拓実に』

石橋｢えっ…Aちゃんって、拓実の事好きだったの…？｣

『ふふ、意外でしょ？拓実にも言われた』

ちょっと自嘲的な笑みを浮かべたAちゃんはやっぱり綺麗で。

ただ、好きな人の想い人の話ってこんなにも心臓が締め付けられるように痛むのか、って初めて知った。

『…意外だから、そういう対象として見れないって。何なんだよ、じゃあどうしろってんだよーってね』

石橋｢っ、た、拓実は分かってない｣

『え？』

石橋｢ずっと一緒にいるから感覚麻痺しちゃってんだよ。だって、｣

だって、Aちゃんはこんなにも可愛くて綺麗で健気で、こんな俺にまで気軽に話しかけてくれて、こんなに、こんなに良い子なのに。

拓実は、分かってない。

『だって…何？』

石橋｢あ、いや、何でも…｣

やっぱ、言えない。

勢いに任せて告白なんてやっぱり俺にはハードルが高すぎた。

『優しいねー、バシくんは』

石橋｢え？｣

『慰めようとしてくれてるん、だよね？ごめん、急に振られた話なんかして。なんて言っていいか分かんないよね。
…こういうとこなのかなー。

こんな私、好きになってくれる人なんか居る訳ないのにね』

石橋｢…居るよ、ここに……｣

俺は貴女が、Aちゃんが好きです。

俺じゃ、駄目ですか。