ゆるゆる短編集 6【芸人】 (ページ15)

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トット多田ページ15

Aside

『せーんせ』

多田｢は？｣

多田先生の口から呟きと共に白い煙が吐き出された。

手には短くなった煙草。

多田｢おま、何してんねん。授業は…｣

『えっへへ、抜け出して来ちゃった。今の時間が移動教室で良かった』

多田｢良かったやあらへんがな…｣

一応教師らしく苦い顔をした多田先生は風に乗って流れてくる煙から守るように私を風上に移動させた。

んふふ、好きだ。

『…煙草って美味しいの？』

多田｢これ無いとストレス溜まってしゃあないねん。Aは吸ったらあかんで｣

『なんで』

多田｢身体に悪いから｣

『でも先生が吸ってる主流煙より私が今吸っちゃってる副流煙の方が害多いじゃないですか』

多田｢…嫌な事言うなぁ、お前｣

まぁよく勉強してる証拠か、って苦笑しながらまだちょっと残ってた煙草を消した。

多田｢はよ戻らんとサボってんのバレるで｣

『…先生もう戻るの？』

あ、ちょっと声色ミスった。

多田先生がにやりとしたのが見える。

多田｢寂しい？｣

『…別に』

多田｢俺は授業無いからええけど、Aは授業中やから戻らなあかんやろ？｣

こんな時だけ先生っぽく振舞ってくるの狡い。

『分かりました、戻りますよ。Aちゃん優等生なんで』

多田｢授業抜け出して来た奴がよう言うわ｣

もうちょっと一緒にいたかったな、なんて。

口には出さずに歩き出すとグッと腕を引かれた。

『っ、！？』

気付けば目の前に多田先生の整った顔。

唇には柔らかな熱。

多田｢…授業ちゃんと受けるんやで、優等生｣

『…っ』

頭をぽんぽんって撫でた多田先生は固まってる私を置いて先に帰って行った。

『煙草…にが…』