やまない雨

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「伊野ちゃん食べないの？」


「んー、ちょっとね……口内炎がさ……。」


「えぇ、駄目だよちゃんと栄養取らなきゃ！」



通院から1週間後。


再検査の結果特に異常は見当たらず、そのまま継続で薬を飲み続けていた。今日は知念と複数取材で1日スタジオでの撮影。


そして今は昼休憩。


正直に言うと全く症状は改善されていない。


そもそも鉄剤を飲み始めても症状が改善されるのは大体2、3週間後と言われていたから仕方が無いような気もするが、鉄剤の副作用がどうにも出やすい体質らしく、薬を飲んで改善されるはずの俺の体はどんどんと悪化していった。



口内炎というのもあながち嘘ではない。

しかしそれを上回る食欲不振。


そして嚥下することに対して何故か大変さを覚える感覚。
正直食べるのがしんどい。


口内炎って言ったのは悪手だったようで知念はご飯をあの手この手で食べさせてこようとする。


「うわっもう、ちょっと、やめろよ、痛えから無理だって」



「痛くても食べて。口内炎ってビタミン足りてないからできるんでしょ？栄養取らなきゃ治るものも治らないよ！」


心配かけてるのは分かっているけどマジでめんどくせえ。


このテンションでずっとお弁当差し出されるのは正直しんどい。


「あー、もう……分かったよ……」


差し出されたお弁当を手に取り手をつけ始める。


こういう時に限ってカニクリームコロッケとまあまあ重めのおかず。はあ、と1つ溜息をつき小さく割砕き口へ運ぶ。


しかしなかなか飲み込むことが出来ない。


「───ん、…………ぐっ………」


ちょっとこれ無理だ。

想像以上に飲み込めないし第一お腹空いてなくて食べたいとも思えない。

なんなら今すぐ吐き出したい。

この塊が喉を通ると考えるだけで痛む。




ふと横を見ると知念がじっとこちらを見つめている。



「伊野ちゃんさあ、ここ最近調子悪い？」


「───んっ、ぐ、………んいや？………」



何事もないように振舞ってはいるが虚をつかれたせいで動揺が出てしまったような気がする。


口の中に残っていたおかずを勢いで飲み込んでしまい思わず顔をしかめる。鋭い知念のことだ。


確信はなくともほぼ断定はしているに違いない。



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