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だよねだよね。
大事な車が汚れるなんて私も絶対イヤだもん、わかるよその気持ち。
てことで、それならば!!
「……車で寝ていい?」
「うん、いいよ。すぐ近くのパーキングに停めてるから、とりあえずそこまで頑張って歩いて。」
そう言いながらも私の腰は登坂くんの右腕にしっかりホールドされてて、荷物は彼の左肩にかかったまんま。
自力で歩いてるような、歩かされてるような。
腕から登坂くんの優しさと男らしい力を感じて、これまたドキドキしながら車に向かった。
本当に歩いてすぐのコインパーキング。
ピピッと音がしたあと、登坂くんは助手席のドアを開けて、シートをフラットにしてくれた。
「荷物後ろに置いとくからゆっくり寝て。」
「……登坂くんは?カラオケ行くの?」
シートに横になってそう聞くと、ドアを押さえて屈んだ状態の登坂くんはフッと笑った。
車の中のぼんやりとしたオレンジの灯りだけの空間は妙に大人の色気を倍増させることを今知った。
この人、キレイな顔してる。
もう何時間も見てる顔なのにそう思ったのはこれが初めて。
「添い寝でもして欲しい?」
「…………」
答えられないのは、少し、ほんの少しだけ、頷いてしまいたいと思ったから。
「あのさ、今拒否るとこでしょ。何か言ってよ。じゃないと俺……」
「だ、ダメ!それはダメ!車汚くしたくない!」
「車じゃなきゃいいのかよ。」
「そ、そうじゃなくて……」
「はいはい、わかってますよー。なんもしないから俺もそっちで寝かせて。俺ももう眠くて限界。」
「……うん。」
「ドア閉めますよ、お嬢様。」
なんてふざけながら微笑むから、また胸がドキッとして、思わず目をぎゅっと瞑った。
なんだこれ……。
久しぶりの感覚に戸惑って。
これが恋の始まりだということに気づかないほど私は子どもじゃないから認めざるを得ない。
「おやすみ、Aちゃん。」
「……おやすみなさい。」
別れたばかりの頃の私は、もう恋なんて当分しなくていいやなんて思ってたのに。
まだ他の人を好きになる余裕なんて心には残ってないと思ってたのに。
恋におちるのはほんの一瞬のことでした。
彼と初めて会ったこの日の夜が、私の人生を大きく変えることになりました。
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いちか(プロフ) - ゆうさん» ゆうさん、初めまして。コメントありがとうございます。楽しみにしていただけて嬉しいです。臣くんとの距離がまだありますが、縮まる様子を楽しんでください。 (2020年8月21日 12時) (レス) id: b90edf1a2c (このIDを非表示/違反報告)
ゆう(プロフ) - 初めまして。臣くんとどうなるのか、この先がすごく気になります。楽しみに更新待ってますね。 (2020年8月19日 16時) (レス) id: 697070514c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:いちか | 作成日時:2020年8月15日 23時