10、敬ってもいいんだよ ページ10
ヒプノシスマイク自体さほど重量があるわけではないが、俺にはその“重さ”がずっしりと伝わってきた。
眩く光るそれを照明に照らしたり、右手左手と持ち変えたり。
初めて拝む実物のヒプノシスマイクに俺は目を輝かせた。
「なんか、新しいオモチャ買ってもらった子供みたいだな」
そんな風に笑う帝統の目がまるで我が子を見守る親のように優しく細められていて、頬に熱が集まるのを感じた。
帝統は二十歳である。かくいう俺は今年で二十四歳。
四歳も年下の男にあんな顔をされてしまうなんて。
羞恥から口元を片手で抑え、抗議の意を込めて帝統を軽く睨めば「おー怖っ」なんてからかわれてしまった。この男には年長者に対する敬意はないのだろうか？
「帝統くん？俺は今すぐ君をここから追い出すことだって可能なんだけど？」
「あー悪かった悪かった！お願いだからそれだけは勘弁してくれよ！」
まあもっとも、追い出す気なんて毛頭ないんだけど。
とは口に出さず「冗談だよ」と一言付け加えるに留めた。俺に追い出す気がないことを知ったら帝統はきっと調子に乗るからである。
冷や冷やしたぜ、なんて息をついた帝統を見て、現状は自分が優位に立てていることに胸を撫で下ろす。年下に舐められてばかりではいられない。
「あ、そういえばこれありがとう。本当にいいもの見せてもらったよ」
「だろー？A絶対喜ぶと思ったんだ」
「でもヒプノシスマイクなんてどこで手に入れたの？」
俺から返されたヒプノシスマイクを慣れた手つきでくるりと回す帝統に問う。
ヒプノシスマイクは本数自体そこまで多いものでは無い。
聴いたものの交感神経、副交感神経に様々な効果をもたらすリリックを放てるこのマイクは用途を違えれば凶器になりかねないからである。
事実、裏ではかなりの高額で取引が行われていると耳にしたことがあるし、違法のものも出回っているらしい。
帝統は一体どのようにこのマイクを入手したのだろうか？
「ああ、ギャンブルでちょっと」
「ギャンブルか、なるほど。でもそれって勝てたからよかったもののもし負けてたら――」
「死んでた、な」
――死んでた？
あまりに軽々しく告げるものだから現実味が湧かないが、つまりこいつは、目の前の有栖川帝統という男は、ヒプノシスマイクの為にギャンブルで命を賭けたということか？
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 181人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ヒプノシスマイク」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
おと姫と愉快なサカナたち(プロフ) - 帝統の小説少ないからありがたいです！更新頑張ってください！ (2021年11月11日 1時) (
レス) @page16 id: e21618e8ed (このIDを非表示/違反報告)
さぁら(プロフ) - 素敵です。好きです。(語彙力)更新頑張ってくださいっ！ (2018年12月6日 23時) (レス) id: 50e6c7827a (このIDを非表示/違反報告)
翡翠 綴(プロフ) - 夏蜜柑さん» 頑張ってください !! 楽しみにしてます !! (2018年9月17日 18時) (レス) id: a0e587eb3a (このIDを非表示/違反報告)
夏蜜柑(プロフ) - 翡翠 綴さん» コメントありがとうございます！素敵だなんてそんな、とても嬉しいです(；；) 遅筆ではありますが更新頑張りたいと思います〜！！ (2018年9月17日 18時) (レス) id: d7baab8fea (このIDを非表示/違反報告)
翡翠 綴(プロフ) - あぁぁあ … 素敵です 。更新頑張ってください 。 (2018年9月17日 3時) (レス) id: a0e587eb3a (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：夏蜜柑 | 作成日時：2018年8月23日 22時
