6、そんなに褒めないでよ ページ6
洗濯を終えリビングに戻ると、つい先程まで夢の中だった帝統はいささか不満そうな顔で頬杖をついていた。
「あれ、帝統。おはよう」
「あー……はよ」
ひょっとして俺起こした?と聞くと、別に、とぶっきらぼうに答える帝統。その耳は心なしか桃色に染まっているように見えるが、気のせいだろうか?
とりあえず昨晩までの様子と比べやけに不機嫌なのは確かだ。相当寝起きが悪いようである。
あまり刺激しないでおこうと思いつつ、いそいそと帝統の正面に座り、いただきます、と手を合わせる。
そんな俺を見つめている帝統にお前も食べていいんだよ、と顎をしゃくって示すと彼もゆっくりと手を合わせた。
そういえば、と帝統が思い出したように言葉を紡いだのは二人で食後のコーヒーをゆっくりとすすっている時だった。
「今日月曜な筈だけど、お前仕事とか大丈夫なのかよ?」
こてん、と首を傾げながら尋ねる帝統の機嫌は大分回復したようだ。よかったよかった。
それにしてもギャンブラーの帝統に仕事の心配をされてしまうとは。
家に転がり込んだことを多少なりとも申し訳なく思っているのだろう。実際には俺が勝手に連れ込んだんだから、帝統は何も気にする必要は無いのに。
「仕事ね、俺はなんていうの……在宅ワーカー?みたいな?だから大丈夫」
大分濁して言ってみたが、帝統は納得してくれなかった。
はあ?と呆れたような顔をされて、から笑いする他ない――しょうがない、真面目に答えるか。
「あー……漫画家、やってるんだよ」
照れ臭くてそっぽを向きながらぼそりと告げた俺に、帝統が目を輝かせながら身体を前のめりにする姿が目の端に映った。
「漫画家!?まじかよ、Aすげーな!え、てことは俺今漫画家にお世話になってんの?やばくね……」
ころころと変わる表情が面白くてつい口角をあげてしまう。元気なやつだ。
「え、どんな漫画描いてんだ?今ある?」
興味深そうに尋ねる帝統の周りがまるでキラキラと輝いているように見えて――漫画家っぽく言うならばトーンのSE-1020番を貼ったようなその様子にしぶしぶと席を立つ。
作業部屋から取り出した単行本を渡せば「これAの漫画?」と聞かれたので素直に頷く。
「見たことあるぜこれ!確か次に来る漫画かなんかで大賞貰ったやつじゃなかったっけ?いや、凄いなA!」
世辞を並べてるようには聞こえない。本心なのだろうか――照れる、嬉しい。
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おと姫と愉快なサカナたち(プロフ) - 帝統の小説少ないからありがたいです!更新頑張ってください! (2021年11月11日 1時) (レス) @page16 id: e21618e8ed (このIDを非表示/違反報告)
さぁら(プロフ) - 素敵です。好きです。(語彙力)更新頑張ってくださいっ! (2018年12月6日 23時) (レス) id: 50e6c7827a (このIDを非表示/違反報告)
翡翠 綴(プロフ) - 夏蜜柑さん» 頑張ってください !! 楽しみにしてます !! (2018年9月17日 18時) (レス) id: a0e587eb3a (このIDを非表示/違反報告)
夏蜜柑(プロフ) - 翡翠 綴さん» コメントありがとうございます!素敵だなんてそんな、とても嬉しいです(;;) 遅筆ではありますが更新頑張りたいと思います〜!! (2018年9月17日 18時) (レス) id: d7baab8fea (このIDを非表示/違反報告)
翡翠 綴(プロフ) - あぁぁあ … 素敵です 。更新頑張ってください 。 (2018年9月17日 3時) (レス) id: a0e587eb3a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:夏蜜柑 | 作成日時:2018年8月23日 22時