12、人を喜ばせる天才なんだね ページ12
「この夢野幻太郎って、結構有名な作家なのか？」
帝統は小説のページをぱらぱらと捲りながら尋ねてきた。
夢野幻太郎といえばユニークな文面で読者を楽しませる一方、いずれの作品にもどこか漠然とした寂寥を孕んでいて、そのコントラストが堪らないと様々な世代から人気を博している売れっ子小説家である。
24歳という若さから放たれる優美な言葉の数々は同業者からも評価を得ているときく。平たく言えば彼には才があるのだ。
かくいう俺も彼の大ファンであり、普段から締切に追われている俺は滅多なことじゃないと絵の依頼はうけないのだが、あの夢野幻太郎直々の頼みということでそのときばかりは締切も構わず喜んで承ったのをよく覚えている。
「結構、っていうかかなり有名だよ。書店で特集組まれてるの見たことあるし、忙しい忙しいってしょっちゅう嘆いてるし」
「へー……あ、返すわこれありがとな」
手渡された本を元あった場所に戻しながら、俺はふと考える。
――帝統、さっき俺の漫画のことは知ってるって言ってたよな。
それにも関わらず俺よりよっぽど著名な幻太郎くんのことは知らない？
それって、どうなんだろうか。
幻太郎くんの作品は一つの文学として価値があると考える俺としては、俺の漫画よりも是非そっちに興味を示してほしいところである。
――っていうのは建前で。
「……なんかA、にやけてねぇ？」
「いや、気のせいだよ」
正直、勝手に上がった口角を隠すので精一杯だった。
だって、あの幻太郎くんの小説のことを知らないような人が俺の漫画のことは知ってるって――本音を言ってしまえば嬉しい。凄く嬉しい。
勝手に照れ臭くなった俺は、すっかり幻太郎くんの本から興味をなくし、俺のGペンや生原稿を見て喜ぶ帝統の背中を思わず小突いた。
振り返った帝統は「今度はなんだよ」と顔をしかめたが、きっとこいつは今俺が喜んでる理由もわからないのだと思う。
いや、わからなくていい。わからなくていいのだ。
帝統に俺の考えていることがわからなくても、俺が彼の考えていることがわかればそれでいい。
――なんていうのを、それこそ出会って一日も経ってない男が同性相手に抱くこととしてはおかしいだろうか？
だって仕方がない。俺は帝統を気に入ってしまったんだから。
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おと姫と愉快なサカナたち(プロフ) - 帝統の小説少ないからありがたいです！更新頑張ってください！ (2021年11月11日 1時) (
レス) @page16 id: e21618e8ed (このIDを非表示/違反報告)
さぁら(プロフ) - 素敵です。好きです。(語彙力)更新頑張ってくださいっ！ (2018年12月6日 23時) (レス) id: 50e6c7827a (このIDを非表示/違反報告)
翡翠 綴(プロフ) - 夏蜜柑さん» 頑張ってください !! 楽しみにしてます !! (2018年9月17日 18時) (レス) id: a0e587eb3a (このIDを非表示/違反報告)
夏蜜柑(プロフ) - 翡翠 綴さん» コメントありがとうございます！素敵だなんてそんな、とても嬉しいです(；；) 遅筆ではありますが更新頑張りたいと思います〜！！ (2018年9月17日 18時) (レス) id: d7baab8fea (このIDを非表示/違反報告)
翡翠 綴(プロフ) - あぁぁあ … 素敵です 。更新頑張ってください 。 (2018年9月17日 3時) (レス) id: a0e587eb3a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：夏蜜柑 | 作成日時：2018年8月23日 22時
