その音で殺して

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｢あ｣

ホームで電車を待っていたらふと、自分の足元が目に入った。
家を出る時に、どれにしよう。だなんて悩んでたスニーカー。
これにしようかなって考えてたモノと違うのを履いてたらしい。

あぁ、今日はとことんついてない。

土曜日の朝だから人は疎ら。
アパレルで働く私にとっては土曜日とか日曜日とかそんなの関係ない。

いつもより人が少ない電車に乗った。



｢おはー｣
｢おはよ｣

｢なんや、朝から元気ないなぁ。｣

｢いや、朝だからテンション低いんでしょうよ｣
｢そんなモンなんか？｣
｢康二が高すぎるだけ｣

今日もオシャレな康二。
緩めのセットアップを着こなせるのは康二のスタイルとセンスがあるからだろう。



やっぱり土曜日って事もあってそれなりに忙しくて、バタバタしてた店内。
自分のやりたい作業が出来ずに一息つけば、気が付けば外は暗くなっていた。

｢あー更新しなきゃー｣

お店用のSNSに載せるコーデを頭の中で考える。

店内の洋服をかき集めて、マネキンに着せる。
あーでもない。こーでもないって色々考えてそれなりにまとまった。


｢お、ええんちゃう？｣
｢ほんと？｣
｢うん。可愛ええ。｣

｢なんか、いつものAっぽくないな。｣

無意識なのか、それともなんなのか。
いつも作るモノより、女の子らしい洋服を着せたマネキン。

私情を挟むなんてまだまだ子供な私。


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