タバコやめろよ【サボ】 (ページ17)

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謝る事も、毛布のお礼を言うこともできずに時は過ぎていく。

ルフィーは、今ワノ国に居るらしい。愛しの我が弟の指名手配書を見てしばしの癒しを得た。

「…エース、ルフィー。失恋って辛いな。」

こいつらに失恋って概念なさそうだけど。

俺は、コアラに怒られたばかりだから資料に手をつけた。仕事をしている間も、飯を食ってる間もずっと船医の事が頭から離れない。忘れないといけないのに、船医に対する恋心は頑固で全然消えてくれる様子はない。

「あー、くそ！もう何も考えるな！」

頭を掻きむしって俺は紙に文字を綴った。船医のことを考えては頭を殴り考えては殴りを繰り返して、仕事を片付けれたのはその日の夕方。まだ日が沈む前だった。

「…はぁ、頭いてぇ…。」

かなりな回数自分の頭を殴ったからめちゃくちゃ痛かった。しかしまぁ、何もすることが無くなったらみごとに船医の事を考えてしまう。未練がましいったらありゃしねぇ。

「…そりゃ嫌われるわな。」
「誰に？」

「…は？」

船医が、俺の方に歩いて来た。その手にはタバコ。

あんなに避けてたのに、今更なんなんだ。

と、俺は自分に完全に非がある事を棚に上げて少しの不満を船医に対して抱いた。
マジで最低だ、俺。

「参謀総長が嫌われるなんて珍しい事もあるんだね。」

お前が俺を嫌ってるんじゃないのか？

そんなセリフ、不貞腐れている俺が言えるわけもなく俺はただ船医がタバコを吐き出す音に耳を傾ける事しか出来なかった。

「…ねぇ、手首もう痛くない？ちゃんと治したけど、痛み止めも何も出さなかったから…。」

俺を見ずに、パラパラと落ちるタバコの灰だけを見て言う船医。でも、その顔には俺を心配しているという心理が強く現れていて、優しげな平行眉は八の字になっていた。その顔を見たら何だかもう全部どうでも良くなってきた。何を怒っていたんだろうか、何を悩んでいたんだろうか。それすらどうでもよかった。

「おう。たかが脱臼だしな。俺タフだし。」

「そっか。」

「おう。」

波の音が静かな空間に響いた。