審神者は鬼を切れるでしょうか【刀剣乱舞×鬼滅の刃】 (ページ5)

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生臭い

腐った匂いが鼻を刺す

…？

「っ、」

自分でも驚く程の速さで身を起こす
雑に途切れた意識
把握しきれない状況
こんな状況で静かに判断が出来た自分を褒めちぎりたい

「…」

最後の記憶は謎の標的と対面したまで

手から伝わってくる感触から地面にうつ伏せで倒れ込んでいたのだと咄嗟に認識する

私はここで何をしていた？
気絶"させられていた？"
刀は？転移陣で移動したか？ならばここは何処だ？

辺りは一面真っ暗で何も見えない
考えられる可能性は差し当たり3つ

1、何者かに囚われたか
2、転移陣が暴発したか
3、ここに至るまでの記憶を何者かに"消された"か

どちらにせよ、今私の周りに"刀がいない"
この状況をどう解釈するか？

「終わり…以外の何よって…」

少しずつ暗闇に慣れてきた目で周囲を凝らす

焦燥感に追われ、下を向いたままの顔を上げる

途端、余りにも眩い月明かりに目を伏せる
月、ここは外
当たり前だ、土があるのだから

起き上がろうにも全身が痛み、上半身を起こし体の向きを帰るのがやっとだ
悲鳴を上げる体に鞭を打ち手探りで体の支えになる物を探す
どうにか手繰り寄せた壁に全体重を掛け体を預け、一息つく

どうやら私の体(命)を預けているコレは木らしいと認識する
薄れる視界で見えるは無数の柱
…じゃあこれは木？私が倒れているここは森？
最後の記憶にある上田城からどのくらいの距離にいる？

「1人じゃ埒が明かないなあ…」

審神者とは刀がいなければこうも無力なのか
久しぶりの出陣で感覚はこうも鈍るのか
己の無力さに思わず苦笑する

「ッ…顕現」

力なく最後の力と霊力を絞り尽くし刀をこの場に"呼び寄せる"
誰でもいいから来てくれ死にそうだ…と

地を揺るがす風が舞い、複雑な陣を描いて膨大な質量が現れていく

「～！ーー！…から貴様！俺の漬物を取るなとあれほ…ど……」

「は…」

「は？」

突然内番服で顕現したのはへし切長谷部(当然の如く極カンスト済み)

まあ、その、なんだ
刀を急に呼び出すのだ
普通はこうなる

素っ頓狂な声を上げた一振はたっぷり30秒は沈黙し

「主、如何されましたか」

手に持ったままの箸を綺麗に揃え脇に置き、正座した

「あ～……ごめんね夕飯中に」

「いえ、主の命とあれば即座に」

「いや…はは」

「それで、如何されましたか主」

「助けて欲しいな～って…」

そこでようやく我に返ったらしい長谷部は血相を変えて審神者の手当に取り掛かる事になる