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「そうだろうね
なら山での襲撃は不運な鉢合わせってことになるかな」

「主は血気術とやらでここに転移させられたんだったか」

「ならば遡行軍は?血気術とやらは遡行軍にも作用する物なのか……?精神攻撃?それとも─」

「まあまあ…
そこらへんは後々鬼殺隊の偉い人から聞くとしてさ」

思考を放棄した様子で首を振る主が、げんなりと項垂れていた顔を上げる

「今後何かしたい事、ある?」

「僕は特に。主がいればそれで」

「俺もだ」

燭台切と山姥切が揃って即答する

「長谷部は?」

二振りの返答を予想していたかのように、僅かに失望の色を宿した目が向けられる

黙って長谷部も頷く

審神者は完全に失意した様子で目を伏せる
重い、どんよりとした空気が間を包む

「主、主は─」

何か言い淀んだ長谷部に、三者の目が向く

「…主は、何かなさりたい事は無いのですか」

二振りが決して聞こうとしたなかった事を問いかけた

「私?私は、」

「主を縛る物はもう何も無いのですよ」

切羽詰まった様子で、長谷部は畳み掛ける

「この世界に政府はいません」

「長谷部、そうと決まった訳では」

溢れ出すものを止められぬように、悲痛な問いを連ねる

「平穏な暮らしを送りたいと思わないのですか
何故、幸せを求められないのですか」

「長谷部!」

強く握り締められた長谷部の拳が、音を立てて震える

「私は」

俯いて歯を食いしばる長谷部に体を向ける


「私は、時間遡行軍を狩ります」

薄らと、微笑んだ

「それが、」

「それが審神者の全てだから、とでも仰りたいのですか」

表面的には笑っている、しかしどこか機械的とも言える微笑が僅かに崩れた
何も言わず、二振りも俯く

「そうでしょう。主は道具だ」

この世界に来てから、どの刀も聞かなかった
主は、時間遡行軍を狩る以外に何をするのか
審神者は、時間遡行軍を倒す者
それ以上でも以下でもない
それが、当たり前であってルールなのだから

「それを主は重々理解している。
ですが同じように我々刀も道具ですそれなのに
…何故我々を人として扱おうとするのですか」

重い、重い、沈黙が広がる
審神者は何か口に出そうとするも、すんでのところで噤んでしまう

「この世界では、主は道具ではないかもしれない
我々は何処まで行っても道具です
けれど主は人間なのだから」

前も後ろも見えない、永遠とも言えた"審神者"

「曖昧な希望かもしれません。……けれど俺は、縋ってもらいたいと思う
一振の、刀として」

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設定タグ:刀剣乱舞 , 鬼滅の刃 , クロスオーバー   
作品ジャンル:ファンタジー
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雪桜 - 鬼滅の刃と刀剣乱舞のクロスオーバーの話は好きなので続き待ってます! (2020年11月29日 20時) (レス) id: 22c6e8b5c8 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ちんたに | 作者ホームページ:p://  
作成日時:2020年11月16日 20時

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