五言目 ページ8
出久と名乗る少年の口から出た言葉はあまりにも悲しいものだった。まだ15年あまりしか生きていないのにも関わらず既に世界に絶望していると言うのか、自分を見ているようで紬は表情を歪めた。
｢本当に死のうと思ってた訳じゃないんです....僕、無個性でいつも周りに馬鹿にされてて....体に出来た痣もその時のものなんです、だから、少し怪我して学校に行けなくなればいいなって思ってしまって....｣
それで少し高い所、つまり神社の階段から自分で転げ落ちたらしい。それこそ今は綺麗な身体だが治す前は見るに堪えない痛々しいものだった。
｢すみません、ご迷惑おかけして....後日お詫びの品を持ってまた来ます、｣
｢いやいいよ、それより今から帰るのかい？かなり暗くなってしまったけど....｣
｢あ、はい、大丈夫です、これ以上迷惑かけられないので....｣
｢....泊まってけば？｣
｢え？｣
普段、何にも興味を持たず感情の薄い紬が珍しく沙羅意外に興味を持ったことに沙羅は少し驚いた。自分以外にも信用出来る人が出来るかもしれないと思った沙羅はそれに便乗する。
｢そうですね、夜も暗いですし是非泊まっていってください。｣
｢いえいえいえ！！！申し訳ないですよ！！それに母も心配すると思うので....｣
｢....友達の家に泊まることにすれば？｣
｢いや、でもいきなりだから....｣
ここで沙羅はあることを思いついた。部屋の中にある棚から和紙を取り出し人型に切り抜き上から筆で綺麗な文字を書く。形代と呼ばれるものだ。
｢えっ、沙羅さん？何をしているんですか？｣
｢んー？僕の個性ですよ｣
｢....出久、運がいいね、いいものが見れるよ｣
出来上がったものを持ち出久の前に座った。沙羅の使う和紙は清めたもので常に机の引き出しの中に入っている。実は今から行うものは紬が既に使わせてもらったものだ。
｢擬人式神＿＿＿＿出久｣
式神、つまり沙羅の個性によって今目の前には出久が2人いる状態である。
｢え、えっ、えっ？！？！？僕が2人？！｣
｢....ふふ、そうだよね、そうなるよね｣
｢安心してください。これは僕の個性です。｣
今回沙羅呼んだ神は付喪神。鏡の神様だ。本来は人の内なる悩みを知るためだったり、悪行を暴くものなのだがもう1つ使い方がありそれがトレースすることだ。鏡に映したものを瓜二つに作り出し存在させる。左右反転ではあるが。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 2人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：藍 | 作成日時：2019年5月10日 22時
