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「え、なんで……」
まさか、この猫が妖なんてことあるの…?
「あんた、珍しいな。」
後ろから急に声が聞こえてくる。
「急に…誰なんですか…?」
振り向いた先にいたのは猫と同じ瞳をした男の人だった。
「あんた何者なの?」
「いや、こっちが聞きたい……」
「まぁ、いいけどさ。周り見てみなよ。」
言われた通りに見渡すと、ありえないくらいの量の妖がこちらを見ていた。
「は、何この数……」
「今、俺に黙って着いてくるか、ここでこの数の妖に殺されるか。選ばせてやるよ。」
この人、有無を言わさない圧がある。
「ニャー」
抱きかかえていた猫が腕から飛び降りて男の人の元へと向かった。
深澤さんが言っていた通り家へ逃げようにもそんなことが出来る状況では絶対にない。
ただ、今このまま連れていかれても…と思う自分もいる。
どうすればいいんだ……?
「あ!おった!お取り込み中かもしれんけど失礼するで。」
「え、誰…」
そんな私の思いも虚しく手を引かれ走り出されてしまった。
「は、お前らちょっと待てよ!」
さっきの男の人が慌てて追いかけてくる。
「ちょっと、誰なんですか!」
「向井康二や。ふっかさん達に聞いてるかは知らんけど、今は黙って着いてきてや。」
「おい!待て!」
「くっそ、なんやあいつ意外に足速いな。」
「待って…本当に無理…!もう走れない……」
この向井康二さん?とてつもなく足が速い。
「あぁ、ごめんな?こっちも譲れないねん。仕方ないな。ちょっと手貸してみ。」
「手…?ど、どうぞ……」
「ん、握るけど堪忍な。」
そういうと向井さんは私の手を握って目を閉じた。
「は、あいつらどこ行った?」
「え、これどういうことですか?絶対あの人私達のこと見えてますよね…?」
「一時的にやけど今あいつに俺らは見えてない。俺が隠してるからな。」
「隠してる…?」
「せや。詳しいことは後で説明する。取り敢えず着いてきてや。」
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作者名:mariri | 作成日時:2023年3月18日 18時