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「佐久間と……？」
「うん、さっきAちゃんにちょっかいかけててさ。」
「なんだよ、それ。やめて欲しいわ。」
「ははっそうなの？」
なんだか、この場にいるのはダメな気がする。
さっきから起きてることをただ単に見つめているだけ。
やっぱり、何も出来なかった。
今だけでいいから、1人になりたい。
誰も気づかないよね。
こっそり抜け出そう。
どうか気づかないで。
「A？」
「…っ」
どうしても耳に入ってきてしまうその声は、思わず足を止めてしまうほど、思い入れがあって安心感が溢れる紛れもない辰哉くんの声だった。
「えっと、ちょっとだけ疲れちゃって……」
辰哉くんの方を向いた時に目に入る、みんなの疲れきったボロボロな姿に余計に自分が嫌な気持ちになる。
あぁ、本当に見てただけだったんだなって。
「ちょっとだけなので……」
「A。」
やめて、その声で呼ばないで。
苦しいくらいに優しいその声で。
2人きりの時だけのはずだったその呼び方で。
「ねぇ、A？俺さAの事ならなんでも分かっちゃうし、分からなくても知りたいって思う。」
「だからさ、Aが今1人になって、感じなくてもいいような責任を自分に感じようとしていることくらい、相変わらず考え事してるとなっちゃうその難しい顔から分かるのよ。」
やっぱり、どうしても、辰哉くんは私のことが分かってしまうらしい。
初めて会った時から変わらない私の難しい顔を見ると。
ただ、今の涙でぐしゃぐしゃな私の顔はまだ辰哉くんも見た事がなかっただろう。
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作者名：mariri | 作成日時：2023年3月18日 18時
