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こんなに走ったのは久しぶりだ。それに加え季節のせいで余計に暑さを感じ汗をかく。
近くに感じる呪力の元を辿る。
古びた公園のベンチに見知った背中を見つけ、一瞬立ち止まるも意を決し進む。身体が熱く感じるのは先程走ったからだけではないだろう。
私に気付き顔だけこちらに向けるその人物__夏油傑は依然と変わらない笑顔で胸を締め付けられる。
夏「やあ、思ったより早かったね」
「…夏油先輩」
夏「まずは座ったら?」
そう言って隣に座るよう促される。前にもこんなことあったなって思いながら素直に指示に従う。
そんな私に満足したのか笑顔で飲み物を差し出してきた。素直に受け取り一口飲む。冷たくて美味しい。
夏「…約束を破ってすまない」
「許しません。帰ってきてください」
顔は見れない。泣いてしまいそうだから。
そんな私に気付いてるのかそっと頭を撫でてくる。人の気持ちも知らないで…相変わらず優しい手付きの人だ。
夏「私はこの世界を変えようと思う。非術師を殺し術師だけの世界を作るんだ」
彼の選んだ選択を不思議と知っていたような気がする。心のどこかでそう考えている先輩に気付いていたのかもしれない。
一心に前を見つめる先輩の横顔からそれが嘘偽りない言葉だという事実を知る。
そしてもう、こちら側に帰ってくる事はないのだと。
俯く私の方と向き合うように夏油先輩は座り、見上げると真剣な瞳と目が合う。
夏「…私に着いて来ないか?」
「え?」
夏「私の描く世界の方が君は生きやすいと思うんだ」
予想外の事に思考が停止する。
でも、答えは決まってる。
「ごめんなさい。先輩には着いて行けません。私は呪術師として皆を守りたいんです。それに…
貴方がいなくなって私までいなくなったら彼が壊れてしまうでしょう?」
そんな世界を想像し苦しそうに笑うAを見て大きく目を見開き止まる先輩。
夏(…そうか、そうだよな)
どういう答えが返ってくるのかは見当がついていた。
それでも聞かずにいられなかったのはきっと__。
瞳を閉じ、笑みを浮かべる夏油先輩を不思議に思っていると優しいけど悲しそうな先輩と目が合う。
夏「悟を頼んだよ」
「夏油先輩!」
立ち上がり離れていく先輩を追いかけようと立つとピシャリと言われる。
夏「私の仲間になる気がないのなら来るな」
その言葉に、ただ立ち尽くす事しかできなかった。
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プスメラウィッチ - とらこさん、この小説は渋谷事変編は、曲げ欲しいです。後五条悟を封印しないで欲しいです。お願い出来ますか? (2021年6月8日 9時) (レス) id: 8685377221 (このIDを非表示/違反報告)
とらこ(プロフ) - プスメラウィッチさん» 初めまして!この作品は五条悟オチですよ!頑張ります!ありがとうございます! (2021年5月26日 19時) (レス) id: f672fafd61 (このIDを非表示/違反報告)
プスメラウィッチ - 初めまして、この小説は五条悟オチですか?できれば五条悟オチでお願い出来ますか?続き頑張って下さい。応援してます。 (2021年5月26日 12時) (レス) id: 8685377221 (このIDを非表示/違反報告)
とらこ(プロフ) - 華蝶-Rantyou-さん» ありがとうございます!頑張ります^ ^ (2021年5月7日 23時) (レス) id: 237713bcbc (このIDを非表示/違反報告)
華蝶-Rantyou-(プロフ) - とても面白いです!更新頑張ってください^^* (2021年5月7日 22時) (レス) id: 0c2f4f76e8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:とらこ | 作成日時:2021年5月5日 21時