いつも通り４ ページ26
河井 side
「まあ、今は山田といい感じやし？」
袖のボタンを留めながら、楽屋に入る瞬間に聞こえた声。
思わず手を止めてしまう。
(…もうええて、)
何かにおいて、あいつと繋げてしまう思考回路。
それを掻き消すように、頭の中でツッコミを入れる。
非常階段のとこでぼーっと外を眺めていたら
思いのほか時間が経っていたので、急いで楽屋に来た。
俺を探していたらしい稲田が駆け寄ってきて、そのまま舞台袖へと向かった。
＋＋＋
「ゆず兄、明日東京で一緒ですね」
出番を終えて、コーヒーを飲みながらスマホを見ていると、リリーが隣に座ってくる。
「おー、そうやな。お前ら泊まり？」
「そうなんすよ。
いい店あったら、教えてください」
「おー、後で送ったるよ」
「お願いしますね」
「おー」
「…」
「…どうしたん？」
「え？」
「なんか、用事あんのかなって」
なにかもっと別のことを言いたそうなリリー。
ちょっと視線を漂わせてから、俺のほうに体を向けて口を開く。
「あれから、Aと会いました？」
なるほどな。聞きたかったんは、それか。
こないだの、リリーと盛山が来れなかった日のこと、
こいつが知ってんのかどうか、わからんけど。
あの日の、泣きそうなAの顔が、蘇る。
「うん、さっきも会うたで」
「そう…ですか」
歯切れの悪いリリー。
俺に何を伝えようとしてんのやろう。
「余計なこと、しましたよね」
「…え？」
「俺、ほんまに首突っ込みすぎました、すんません」
思いもよらない言葉に、黙ってリリーの横顔を見つめる。
「俺、結局Aのためとしか考えてなくて、」
「…」
「ゆず兄に憶測でいろいろ言って、困らせてしまって…すいませ、」
「なんも悪くないよ、お前は」
「…え？」
そう、何も悪くない。
今思えば、俺はいつも、リリーの言葉から逃げてた。
そのときはわからんかったけど、何となく、
正面から受け止めるのを、避けていた気がする。
それからリリーは、それ以上何も言ってこんかった。
いつも通り、ってなんやったっけ。
俺はいつも、Aをどんな顔で見てたんやろう。
そう思いながら、劇場を出る準備を始めた。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 562人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「芸人」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
そらきち(プロフ) - のさん» ありがとうございます😭そう言っていただけてほんとに嬉しいです…！励みになります！なかなか更新できずにいますが、お話はしっかりできてますので、お待ちください😊 (2022年10月1日 13時) (
レス) id: 729794252e (このIDを非表示/違反報告)
の(プロフ) - これからも楽しみに待っています！気長に更新頑張ってください！！ (2022年9月21日 21時) (レス) id: fbe940271f (このIDを非表示/違反報告)
そらきち(プロフ) - exさん» はじめまして〜温かいコメントありがとうございます(*^^*)嬉しいです…！！今はシリアスな感じですが、もっどかしい二人がどうなるのか…ぜひ見守ってくださいな^^ (2022年4月21日 22時) (レス) id: 3760b31582 (このIDを非表示/違反報告)
ex(プロフ) - 楽しみに読ませてもらってます！きゅんきゅんしてます🤤でもいまは少し苦しくなる話だけどいつかゆず兄と主人公ちゃんが幸せになるのを願ってます😭💓更新頑張ってください！楽しみにしてます！！❤️❤️❤️ (2022年4月20日 16時) (レス) @page6 id: 905bf9a542 (このIDを非表示/違反報告)
そらきち(プロフ) - おきゅらさん» はじめまして！なんと、、、一気読みありがとうございます…！そのお言葉に私も嬉しくて涙溢れそうです😭✨これからもよろしくおねがいします！ (2022年4月16日 18時) (レス) id: 729794252e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：そらきち | 作成日時：2021年2月18日 22時
