一 石 二 鳥 彼 氏 【坂田銀時】

一石八鳥 ページ9

ここ一週間程、彼奴は仕事から上がると必ず店の前に居て、
家から出る時も必ず遠くから見つめてくる。気持ち悪い。

ポストに脅迫のお便りが届いたり、盗撮されてたり、無言電話がなったり、干してた下着が無くなってたり、ありがちな嫌がらせは一通り受けた。

はい、それでは本日のお手紙開封の儀で〜す。
どんな罵詈雑言が書かれてるのかなぁ？



『お前仕事行くばっかりでつまんねぇ毎日過ごしてるみてぇだな。
彼氏とやらはいつになったら現れんだ？』

「げ、バレちゃう。」



私に彼氏が居ないってバレれば、付き合えって命令がより一層酷くなりそう。

これは手を打つ必要があるけど…どうしたもんか。

リビングにて脅迫文を握り締めながら大きな溜め息を履いた時、
傍に置いていた携帯が音を立てて震えた。



Prrrrr___



「はーいもしもし」

母「久しぶり〜元気？」

「普通。どしたの？」

母「今週の土曜江戸に行くから2週間くらい泊めて欲しいの。
あと前から言ってた彼氏にも会わせてね。」

「え、ちょ待っ」

母「何？都合悪い？」



無理無理、現在進行形でストーカーにつけられてる私の家に親を泊めるわけにはいかない。
親まで危険に巻き込んでしまう。

彼氏とかいないって。殺意向けて来るストーカーしかいないって。



「今さ、同棲してるからさ、ウチ泊めてあげれないんだよね…。
お金なら出すからホテルとか泊まってくんない？」

母「同棲？んなの聞いてないけど！いつの間にそんなことしてたの〜。」

「まぁほら、言うほどのことでもないかなって。」

母「いや言うほどのことでしょ。
妹が江戸に住んでるからそっち泊まるとするわ。
ホテルのお金はお気になさらず〜〜。」

「そう、わかった。」

母「彼氏さんとご飯行きたいから予定聞いといて？」

「わかったわかった。じゃね。」



これはもうシンプルにめちゃくちゃ困った。どうするよ。

レンタル彼氏でも使う？

いや あれは1日限定のデートを楽しむためであって、長期戦になる私には無意味だ。



こんな無理なお願いをきいてくれるお店…


「あ、前にお店に来たお侍さん…！」


随分と前にお店に来たお客さん。

彼は万事屋を営んでいて何でも依頼をきいてくれると言っていた。

確かお妙の弟がそこで働いてるとかで印象に残っている。

お客さんに貰った名刺をまとめている引き出しを引っ張り出す。
やっと見つけた名刺、そこに書かれてた名前は…




「万事屋銀ちゃん、か。」

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