電話越しの泣き声 ページ38
side無し
『もし…もし…？』
電話口から聞こえてきた声は泣いているのか鼻声で掠れていた。
その事を不審に思いつつも、電話をかけた張本人はもしもしでも挨拶でもない言葉を放つ。
「…“また明日、楽しみにしている”」
何も知らない人が聞けばなんの話だと、間違い電話だと言うだろう。
しかし、相手方にはその言葉に覚えがあるものだったのだろう。
誰だとも聞かず、かと言って切る訳でもなく少しの沈黙が流れた。
『……ぃ兄、ちゃん…？』
数分…いや、数十秒の沈黙の後、相手方は震える声で尋ねる。
それを聞き男は満足そうに口元を緩め、ただ一言、「あぁ」とだけ返した。
その答えが嬉しかったのだろう。
電話口の相手が息を飲んだのが聞こえた。
「久しぶりだな。」
『えと…うん、久しぶり。
びっくり、したよ。どうしてこの番号…』
よほど驚いているんだろう。
電話口から溢れる声は震えていて、どこか片言のように妙な区切れ方をしていた。
その言葉も段々と消えて行き、最後には嗚咽だけが電波に乗って届けられていた。
「…何かあったのか？」
『う…うぅん…ひっぐ……なん、でもな…ぅうぅ…ぅあぁぁぁああ…！！』
何でもないと言いたかったのであろう電話口の声は火のついたように泣き出す。
男は一切何も言わず、ただただ黙ってその続きを促す。
それに気付いているのか否か、電話の相手は泣き声を響かせる。
だが、電話越しだからだろうか。
幼い子供のように大声ではなく、押さえつけたような小さな声で激しく泣く。
『今っ…こ、コセーの…ひぅ…ことでっな、悩んでてっ…ぇええ…！』
「“個性”のこと？何かやったのか？」
『せっ制御っ…できっ…うぁ…なぐ、でっ……く、クラスっ…の、ともっ、だち…し、締めごろじそう…にっ……！』
「…誰か側にいないのか？」
『い、いない……！』
「そうか…だが、殺しそうになったってことは寸前で回避できたんだろう？
大丈夫だ。やろうとしたのはお前じゃない。
落ち着け…アイツはいないのか？」
『ひっぐ…めっメル…？』
「あぁ。心配なら少しの間、メルと一緒にいれば良い。」
『うっ…ん……そー、する…』
泣き声はすすり泣きまで弱まり、男はそっと目を閉じる。
何かを思い出したかのように口を上げ、電話越しの相手を落ち着かせるように優しい声で話しかけていた。
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ミリイ(灰崎信者)(プロフ) - 鋼夜さん» ステイン様の小説も書いて欲しいです (2018年9月9日 16時) (
レス) id: 99fc6b4eef (このIDを非表示/違反報告)
鋼夜(プロフ) - きなこねこ。さん» 楽しみにしてくださり、ありがとうございます！！ 次章でも楽しんで頂けるよう、頑張りますのでどうぞよろしくお願いします！ (2018年4月29日 22時) (レス) id: 0d16a2c0e0 (このIDを非表示/違反報告)
きなこねこ。 - もうすぐ７章目ですねー!輪廻ちゃんがどう動くのか楽しみです！ (2018年4月29日 0時) (レス) id: d0d6790e43 (このIDを非表示/違反報告)
鋼夜(プロフ) - きなこねこ。さん» ありがとうございます！楽しく読んで頂けているのなら、本当に嬉しいです！ (2018年4月21日 22時) (レス) id: 0d16a2c0e0 (このIDを非表示/違反報告)
きなこねこ。 - 楽しく読ませていただいています!輪廻ちゃん好き...。もっと伸びてほしい! (2018年4月21日 22時) (レス) id: d0d6790e43 (このIDを非表示/違反報告)
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