【A3!】好きな人【短編集】 (ページ2)

今日:6 hit、昨日:1 hit、合計:1,764 hit

皆木綴ページ2

大学から数駅離れた小洒落たカフェ。最近の私の憩いの場。個人経営なだけあって値段はちょっと高めだけど、静かな店内と穏やかな店主がとても気に入っている。今日も今日とて私は、授業が終わったその足でカフェに訪れていた。

今にも鳴き出しそうなお腹の虫をオムライスで落ち着かせ、ノートパソコンを開いてレポートに取り掛かる。

・・・・・・・・・・

｢ッッッ！終わったぁ～｣
思ったより大きな声が出てしまい、慌てて口を押さえる。

｢ははっ、お疲れ様です｣
笑われてしまった、とそちらを向くと、そこに居たのはこのカフェの制服であるエプロンに身を包んだ大学の後輩。
｢あれ、皆木くん？｣
｢どーも。A先輩、随分集中してましたね｣
俺が珈琲運んできても気付かないくらいに。いたずらっぽく笑う彼は、本日3杯目のドリンクをそっとコースターに置く。

｢えっ！ごめん、全然気付かなかった…｣
｢いいんすよ、それだけ課題捗ってたんでしょ？遅くまでお疲れ様です｣
そう言われてふと窓の外を見ると、いつの間にやら真っ暗になってしまっていた。店内には既に私以外の客はいない。スマホで時間を確認すると20:50を回ったところ。もうすぐ閉店の時間だった。

｢うっそ、もうこんな時間？ごめんね、遅くまで。すぐ出るから｣
慌ててパソコンと資料をまとめると、皆木くんはまた小さく笑う。
｢そんな慌てなくても大丈夫っすよ。俺、もうすぐ上がるんで送りますから、待っててください｣
｢え、でも…｣
カウンターにいる店主を見ると、嫋やかな笑顔を携えたままコクリと頷く。断るのもなんとなく失礼かと思い、なんだか流されてるような気がしながらも、少し冷め始めたカフェラテに口をつけた。