【HP】カオスセオリーの定理 Ⅳ (ページ6)

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⋞𝟻⋟ ページ6

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Aはテレビの前であぐらをかきながらコントローラーを握り、指を忙しなく動かしていた。

エミリーおばさんが去年のクリスマス、孤児院の皆にゲーム機を贈ったらしい。

夏休みが入ってから、他の皆が外で遊んでいる最中だけAも使ってみたらすっかりハマってしまったというわけだ。

「もうちょっとテレビから離れてやりなさいよ、目、もっと悪くなるわよ」

「うんー」

編み物をしながらエミリーおばさんが注意をした。Aは画面に「LOSE」の文字が現れてから、立ち上がって後ろに下がった。

「A、あなた、騎士団の本部にいつになったら行くの」

Aの手が止まった。

Aが動かしていたアバターは一方的にボコボコにされて、またしても画面は大きな「LOSE」で埋められた。

「ダンブルドアはあなたもいていいって言ってたって、私ちゃんと言ったはずよ」

「私も言ったはずだよ。私の家の場所を教えてくれるまで、私はどこにも行かないって」

夏休みに入ってから二人はこのやり取りを何度もしている。そして何も進展がない。

おばさんは編み物をやめて、Aを見つめた。

「あなたの目が悪くなっちゃった理由、覚えてる？」

「私が本ばっかり読んでたからでしょ？」

「本ばかり読むようになったきっかけの話よ」

Aにとって読書は苦ではないが決して好きではなかった。それはただの暇つぶしで、それ以上でもそれ以下でもない。

「あなたが五歳くらいの頃ね。あなたはクリスマス・プレゼントに『ママとパパ』をお願いしたの。私はもちろん無理だって言ったわ____そしたら、家中の窓が割れたの。それ以降しばらくそういうことが続いて、『あなたを怒らせたら変なことが起こる』っていうのが皆の共通認識になった。自然とあなたは誰とも遊ばなくなった」

確かに、Aにはちゃんと皆と遊んだ記憶もあった。大嫌いなかくれんぼ。

「しかも多分、あのときのあなたはあれを意図的にやっていた。この子はケイオスなんだって強く実感させられた。恐ろしさと同時に____あなたの母親に怒りが湧いたわ。自分を想う娘はここにいるのにって」

エミリーおばさんが棒針を強く握った。

「私は、無意味に夢を見させるのが嫌いよ。家に行ったって、あなたが願うようなものは何もない。あなたの母親はそういう人よ」

「サンタさんは無意味な夢なの？」

「あなたにご両親と会わせることは、誰だって不可能だもの」

「……確かにそうだね。でも私が見たいと思うのは、夢じゃなくて現実だよ」

Aの言葉におばさんはハッと目を見開いた。そして意を決したように息を吸った。

「____そう、わかった」

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