【HP】カオスセオリーの定理 Ⅳ (ページ2)

今日:22 hit、昨日:38 hit、合計:10,360 hit

　　ページ2

・

「私は純血主義よ。あんたが純血じゃないと知ってれば声なんてかけなかった。この考えは余程のことがない限り変わらない」

「今更友達になんてなれない。わかってる」

謝罪なんてしないしいらない。Aはただ、けじめをつけに来たのだ。

「ただ言いたかっただけ。伝えなきゃと思っただけ。あなたの気持ちにちゃんと気づいたって。気づくまでかなりの時間がかかったけどね」

あのときのAはいつも周りを見下してばかりいた。

ちょっと変わった自分を認めてくれない皆が悪い。純血じゃない私を受け入れてくれない皆が悪い。

Aの方から受け入れてもらおうと行動したことは、今まであったのだろうか。

Aがそのことに気がつくまでにかなりの時間を要した。

してもしなくても結果は同じだっただろうとAは確信している。

でも、変わろうとしなければなにも変わらないのだ。

「あなたに何かしてほしいわけじゃない。私のために言っているの」

Aはグリーングラスの瞳を静かに見つめた。

「……あんたが入学するまでに何があったのかなんて知らないわ、興味もない。知ったところで同情なんて絶対にしてあげない。たとえ何があったって、あんなことがなくったって、あんたが純血じゃないと気づいた時点で私はあんたと関わろうとしなかったはずよ、絶対」

たられば論は自分を傷つけるだけだと知っているAだったが、それでも、きっと彼女の言うとおりだろうなとAは思った。

「でも私が、あんたと友達になりたいと一瞬でも思ってしまうことも、変わらなかったと思う」

そう言って、グリーングラスは大股で教室を出ていった。

Aはふーっとため息をついた。

これで少しは変わることはできたのだろうかと、自問した。

答えはない。

「ノーブル・ブロッド」

Aは今のスリザリン寮の合言葉を呟いた。

noble blood(高潔な血)

純血だからといって、決して高潔ではないようだ。

彼女がやったことが、彼女の動機が、彼女とのこの仲違いのどこが気高く、穢がないというのだろう？

結局たいして変わらないのだ、とAは静かに笑った。

・