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「やっぱりすぐに退職しよう。前から言ってただろう、君には合ってないって」
「それは無理。この年の高卒無資格の女を雇ってくれるところなんて、簡単には見つからない。給料だっていいし」
「確かにそうだけど、あそこは法律スレスレの経営をしてるだろう、何度も言ってきたじゃないか。倒れてもわからないなら、どうしたら納得してくれるんだ？」
「けど、私は働いてお金を稼がなきゃならないの！」
「君に何かあったら元も子もない」
「Aはこれから梟谷に行くの。あなた、梟谷の学費、いくらか知ってる？」
「もちろん知ってるさ。仁とAのために今までコツコツ貯金をしてきただろう」
「それだけじゃない！あなたは水着が1着いくらするか知ってる？ゴーグルは？買い換える頻度は？練習用と試合用で何着必要か、考えたことはある？大会の遠征費用は？ホテル代は？」
「スポーツにはお金がかかる。それは承知の上で2人にやらせたんだろう……君は、君の身を削って稼ぐそのお金は、全部Aのためだけのものなの？」
「どういう意味？」
「前から思ってたけど、なんで君は仁の試合は見に行かないんだ？」
「土曜日は仕事があるし、そう簡単に何日も休めないでしょ」
「いや、聞き方を変えよう。なんでAの試合には毎回ついていくんだ？Aは仁と違って、近場の小さい大会とかもしょっちゅう出てるのに、毎回必ずそれに付き添って、わざわざそのために君の時間をAに使うのは、ちょっと度が過ぎてると思う」
「あなたは全然行かないくせに、行くことに文句を言える立場なの？」
「僕のは土日に休みを取りにくい仕事だって、わかっててそれを言うのは違うだろ。……君は仁のインターハイ見に行かなかったよね。仁だって頑張ってるよ」
「仁が頑張ってるのは知ってる！」
「君は仁のために頑張ろうとは思ってないよね？」
「だって、Aは、私がいないとなんにもできないんだもの。荷造りも電車の乗り換えも。仁は、一人でも大丈夫なのに、チームメイトまでいるのよ、Aを、勝たせてあげたいの……」
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作者名：ねむねむねむね | 作成日時：2024年2月26日 23時
