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「先輩って、妹さんと仲良いっすよね」


今朝、一緒に並んで歩く塩崎兄妹を見た。多分妹の方は水泳部絡みの何かで来ていたんだと思う。

妹のAちゃんと知り合ったのは極最近のことだ。

会うたびに距離感の近い兄妹だなと感じた。

前回会ったとき2人は喧嘩別れのようなものをしていたはずなのに、笑いながら歩く2人からそんな気配は微塵も感じさせなかった。

俺も兄貴と妹がいるが、あそこまで仲良くはない。


「んー?まあそうなんだろうな」


先輩がタオルで額の汗を拭きながら言った。

妙に様になる、なんて不覚にも思ってしまった。


「先輩の方はともかく、あの年なら思春期とか反抗期とかありそうなのに」


俺にもそういう時期に心当たりがある。妹はまだだけど、兄貴にもあった。


「あー、俺んち皆生活リズムバラバラであんま顔合わせないからなー、親も自由にやらせてくれるし。俺もそういうのなかったな!つーか、なんでそんなこと気になんの?」


俺は言葉を詰まらせた。

咄嗟に脳裏に浮かんだ言葉は「妹さんはちょっと変な子だと思った」だったが、馬鹿正直にそんなことを言えるわけがない。

Aちゃんが俺の1個下だと知ったとき心底驚いた。

Aちゃんは年齢の割に小柄だが、俺が言いたいのはそういうことじゃない。

なぜだかとにかく幼く見えるんだ。


「俺も兄妹いますけどわざわざ弁当届けたりお土産買ったりなんて頼まれない限り絶対しないんで!なんかすげーなーって!」


当たり障りのないことを言って誤魔化した。先輩は俺の言葉に納得してくれたようだ。


「あのTシャツのことはもう忘れろよ!でもあいつ、なんだかんだ家ではまだ着てるし、俺のこと結構好きだよ。バレーの話とか練習に文句言わず付き合ってくれたのAだけだったし、俺もあいつのこと好きだよ」

「……先輩、ちょっと気持ち悪いっす」

「俺もちょっと思った、これも忘れてくれ」


先輩は首にかけたタオルで顔を隠した。


「俺達が普通より仲が良すぎるのは自覚してるけど、それはそれとして、俺もAはちょっとズレてると思うよ」


思わず「えっ」と声を漏らした。「そういうこと言われたの、お前からだけじゃないから」と先輩は笑った。


「興味がないんだ。水泳と、ちょっとだけバレー。それ以外にまじで興味がないし面倒なんだと思う」


「あいつ、変だよ」と先輩は零した。


「わり、喋りすぎた」

「いえ……」


先輩も大概なバレー馬鹿じゃないすか、なんて、茶化してはいけないやつだ。

タイミングよく雀田が休憩時間の終わりを告げてくれた。

俺は「助かった」と、そう思った。


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作者名:ねむねむねむね | 作成日時:2024年2月26日 23時

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