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いつも通りの時間に起きた私は、いつもよりもちょっと急いでお母さんが作ってくれた朝ごはんを食べ、いつもよりかなり急いでダルダルのTシャツを首に通し、いつもとは違って玄関に向かった。
「お兄ちゃん待って、私も自転車取りに行く！」
流れるようにクロックスを履き玄関を開け、門を閉めたお兄ちゃんを呼び止めた。
お兄ちゃんも昨日自転車を学校に置いてきたため、今日は徒歩で部活へ行くようだ。
私と違って天気予報を見ていたのだから歩いていけばよかったのにと思うけど、お兄ちゃん曰く、「もし雨が降らなかったら勿体無い」とのことらしい。
「その格好で行くのか？」
「裏門からさささーっと取ってくから大丈夫でしょ」
お兄ちゃんが春高のお土産で買ってきたTシャツに短パンを着て、使い古したクロックスを履いたこの姿を見られるのは確かに避けたいことではあるが、だからといってわざわざ身なりを整えるほどのことでもなかった。
「日曜も部活あるのいいなー、こっちは休みだよ」
「来年からはお前も毎日泳げるな！」
そんな毎日を想像するだけで胸が踊った。
雑談に花を咲かせているうちに梟谷高校の正門についた。
「なんだあそのTシャツ！クソかっけーな！！」
私は肩を震わせて勢い良く振り返った。
こちらを指差し顔を輝かせる木兎さん、木葉さん、それにバレー部1年の面々がいた。
「わかってんじゃねーか木兎！エースの心得Tシャツ！イケてるだろ！」
私はこれを「かっこいい」だなんて思ったことは一度もない。
お兄ちゃんと木兎さん以外、全員苦笑していた。思っていることは皆同じだろう。
「なら先輩自分の分も買えばよかったじゃないすか。Aちゃんもよく着てるな」
「えっと、まあ楽だしいいかなって。せっかく買ってきてくれたんだし」
「こいつ買ってきたもん全部ちゃんと使ってくれるからさー！さすがに俺でもこれ着るのは無理だからAに買ったんだよ」
一斉にお兄ちゃんと木兎さん以外から同情の眼差しを向けられた。
「いやいや」「先輩それはないわー」「妹さん可哀想すよ」とそれぞれが口にする。
「……もうこれ外で着ない」
「もしかしてそれクラブにも着ていってた？」
顔周りの体温が一気に熱くなった。
「だって自転車ですぐだし！別に何着ても……ああもう、服に無頓着で悪かったな！」
私はまくし立てて振り返り、裏門へと向かった。お兄ちゃんが何か叫んでいるが知るもんか。
よく考えてみれば、チームメイトなどいない私にこんなTシャツを渡すなんて、お兄ちゃんは相当趣味が悪い。どうして今まで気づかなかったんだ。
私は歩く速度を一気に上げた。
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作者名：ねむねむねむね | 作成日時：2024年2月26日 23時
