38 ご褒美 ページ40
親父からもらったケーキバイキングのチケットの出番は、残念ながら無さそうだ。
「はぁ……」
姉ちゃんと行きたかったが、惜しくも日程調整がうまくいかなかった。
ごめん！と姉ちゃんの謝る姿が脳裏に焼き付いている。
せっかく貰ったのに、使ってやれなくてごめん、と握りしめたチケットに念を送る。
「ケーキバイキング？」
風呂上がりの四葉さんに手元を覗き込まれる。今日は四葉さんの部屋でお泊まりするので先に部屋で寛がせてもらっていたのだ。
「はい。いりますか？」
「え、行かねぇの？シオン、甘いの好きじゃん」
「そうですけど…」
頭の中の姉ちゃんとケーキを楽しそうに食べる光景が崩れていく。悔しい気持ちでいっぱいだ。
そんな俺の気持ちを汲み取ったのか、四葉さんがこう言ってくれた。
「うし、シオン。俺と行こうぜ」
「え、」
見上げた四葉さんの顔は、優しくて、いつもより頼もしく見えた。
￣ ￣ ￣
了さんから貰ったケーキバイキングのチケット。1枚しかくれなかったのはきっと、いや絶対嫌がらせだ。
「これで行かないのもなんか癪だし…」
意地になって一人で来てしまったが、会場に入ってから少し後悔した。男一人は目立つ。
「あ、」
「お、いすみんじゃん」
何故か同級生の四葉と知らない奴がいた。知ってる奴いて少し安心したのは口が裂けても言えない。
一人ならここで食えば？と四葉の言葉に甘えて一緒に食べることにした。こいつ、やっぱいい奴だな。
隣の小さい奴と目が合う。どことなく九条天に似ていて少し緊張する。
「いすみんは、俺といおりんの友達」
「小鳥遊Aです、いつもお世話になってます」
「亥清悠、よろしく」
世話してんのは俺の方だし、と得意気に言う四葉を適当にあしらって小鳥遊Aを観察する。
俺の目線に気づいて自分の目の前にあったケーキをずいと寄せてきた。
「これが今のところ一番うまいです。よかったら、どうぞ」
クリームがついていることに気づかずに、にこにことケーキを勧められた。
そんな間抜けな姿に思わず笑ってしまう。
「？」
「あ、シオン、またクリームついてっし」
「す、すみません…」
どこか嬉しそうに世話をする四葉に恥ずかしそうなA。まるで兄弟のやりとりみたいで微笑ましい。
なんだ、ただの子どもじゃん。
九条と似てるからって、警戒してた自分が馬鹿らしく思えた。
憎らしく思っていた了さんに、ほんの少しだけ感謝した。
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弥生 - 今まで読んだアイナナの男主の中で、一番面白かったです。 (2021年9月20日 20時) (
レス) id: a8e691c982 (このIDを非表示/違反報告)
さくらんぼ(プロフ) - ゆぅあ(o・ω・o)さん» コメントありがとうございます！随分前のお知らせでしたので困惑させてしまいましたね、すみません(^^; 更新待っていただけて嬉しいです。ありがとうございます！ (2021年2月1日 18時) (レス) id: 137c45cd89 (このIDを非表示/違反報告)
ゆぅあ(o・ω・o)(プロフ) - 間違えました！！！！ですけどまた更新待ってます (2020年12月14日 22時) (レス) id: f45915f976 (このIDを非表示/違反報告)
ゆぅあ(o・ω・o)(プロフ) - 来年の三月まで待ってます！！ (2020年12月14日 22時) (レス) id: f45915f976 (このIDを非表示/違反報告)
成瀬 - 早く続きが読みたいです！お願い致します (2020年4月22日 11時) (レス) id: 9df39f7e96 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：さくらんぼ | 作成日時：2016年5月8日 12時
