26 一人じゃない ページ28
俺が落ち着くまで三月さんは黙って頭を撫でてくれた。
冷静になった俺は急に恥ずかしくなり、三月さんの体をやんわりと押した。
「ごめんなさい…」
「なんで謝るんだよ」
項垂れる俺に呆れながらも笑かけてくれる三月さん。
二人で並んでベッドに座り、俺は口を開いた。
「俺、昔から一人で家にいることが多くて…」
母さんは俺が物心つく頃に他界し、親父は芸能事務所の社長だし、姉ちゃんはバイト三昧で家にいる時間が少なかった。
家族のために、…俺のために、働いていることはわかっていたし嬉しかったけど、そのときの俺は嬉しさよりも寂しさのほうが勝っていた。
そんな時、一人ぼっちの夜に今日みたいな大雨が降った。
窓から見る空はどこまでも曇っていて…。
まるで、俺の気持ちを映したようだった。
しばらくぼーっと空を見つめていると、眩い光に包まれた。
そして、凄まじい音が鳴った。
「怖い」
その言葉だけでは言い表せないほど、俺はその時の雷が恐ろしくて、一人布団に隠れて耳を塞いでいた。
また凄まじい音が響いたと思ったら、暗闇の中で何かに押し潰されるような感覚になった。
どうやら二回目の大きな雷で地面が揺れ、ベッド付近に置いてあった物がぐらついて俺の体の方に傾いたみたいだ。
当時、小さかった俺はなにが起こったかわからず…。
ただ理解できたのは、『雷』というものは恐ろしいものだということだけだった。
「こうして、俺のトラウマができました」
「そうだったのか…」
「最近、雷のことなんて忘れてたのに…」
またあのときのことを少し思い出し、体が震えるのを隠すように俺は膝を抱えて俯いた。
すると、三月さんは俺の頭に手を置いて、こう言った。
「トラウマのこと忘れるくらい、楽しい思い出が増えたからじゃないか？」
「え…」
「今のお前は、前のお前とは違う。
お前は一人じゃない。
俺たちがいるだろ？」
三月さんの笑顔が眩しくて、言葉が嬉しくて、俺は目頭が熱くなるのを感じた。
「ありがと、ございます……」
ああ、情けない。
人前で泣くなんて、こんなの初めてだ。
よしよし、と言いながらまた抱き締めてくれる三月さんに、今だけ……、と思いながら思いきり抱きついた。
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弥生 - 今まで読んだアイナナの男主の中で、一番面白かったです。 (2021年9月20日 20時) (
レス) id: a8e691c982 (このIDを非表示/違反報告)
さくらんぼ(プロフ) - ゆぅあ(o・ω・o)さん» コメントありがとうございます！随分前のお知らせでしたので困惑させてしまいましたね、すみません(^^; 更新待っていただけて嬉しいです。ありがとうございます！ (2021年2月1日 18時) (レス) id: 137c45cd89 (このIDを非表示/違反報告)
ゆぅあ(o・ω・o)(プロフ) - 間違えました！！！！ですけどまた更新待ってます (2020年12月14日 22時) (レス) id: f45915f976 (このIDを非表示/違反報告)
ゆぅあ(o・ω・o)(プロフ) - 来年の三月まで待ってます！！ (2020年12月14日 22時) (レス) id: f45915f976 (このIDを非表示/違反報告)
成瀬 - 早く続きが読みたいです！お願い致します (2020年4月22日 11時) (レス) id: 9df39f7e96 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：さくらんぼ | 作成日時：2016年5月8日 12時
