17 癒し ページ19
帰宅後、俺は不審者に襲われたことを誰かに言えるはずもなく、何事も無かったかのように三月さんと夕飯を作った。
ちなみに今日はオムレツだったりする。
六弥さんがオフクロの味のようです、って褒めてくれたけど、たぶんお袋の味って言葉をただ使いたかっただけだと思う。
食器を洗い終え、静かになったリビングのソファで携帯の画面を見つめる。
そこには、新しく追加された名前が二人分あった。
ーー『八乙女 楽』、『十 龍之介』
さっき俺を助けてくれたTRIGGERの二人だ。
車で送ってもらっているときにラビチャやっているかどうかを聞かれ、YESと頷いた瞬間携帯を奪われ追加された。
別に嫌ではないけれど、いつも液晶画面に映っている人たちと連絡がとれるだなんて……。
ファンに刺されないだろうか、俺。
一つ心残りなことは、九条さんと会えなかったことだ。
…実は、俺は九条 天さんの、ファンだったりする。
これは誰にも話していない秘密である。
もちろん姉ちゃんにもシキにも言ってない!
だって、不良がアイドルにきゃーきゃー言ってたら、格好悪いし…。
むしろ俺が姉ちゃんにきゃーきゃー言われたい。
「はぁ……」
一度でいいから、会ってみたい。
俺は待ち受けに設定してある天使のような微笑みを浮かべてこちらに手を振る九条さんを見て、会いたいという欲求を落ち着かせた。
その時、こちらを見ていた四葉さんに気づかないくらい、俺は夢中になっていた。
「……てんてん?」
________________
翌日、学校から寮に帰ると、姉ちゃんがいた。
「きゃあっ」
久しぶりの姉ちゃんに嬉しくて抱きついてしまった。
姉ちゃんの胸に頭を押しつけていると、困ったように笑った後、頭を撫でてくれた。
懐かしい姉ちゃんの体温に感動し、顔の筋肉がゆるゆると緩くなっていくのを感じた。
「久しぶり、A。元気だった?」
「うん。姉ちゃんも、元気そうでよかった」
ふふ、と笑う姉ちゃんはいつみても心が癒される。
俺の様子を見に来たという姉ちゃん。
もういっそここに住んでほしいくらいだ。
「文化祭、何するか聞いたよ」
「えっ」
「赤ずきんの格好するんでしょ?Aかわいいから絶対似合うよ」
「えっ」
「当日はメンバー全員で行く予定だからね!」
「えっ」
ちょうど休みになっててよかった〜、とにこにこする姉ちゃんはかわいい。かわいいんだけど……。
え?なんで知ってんの姉ちゃん…?!
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弥生 - 今まで読んだアイナナの男主の中で、一番面白かったです。 (2021年9月20日 20時) (レス) id: a8e691c982 (このIDを非表示/違反報告)
さくらんぼ(プロフ) - ゆぅあ(o・ω・o)さん» コメントありがとうございます!随分前のお知らせでしたので困惑させてしまいましたね、すみません(^^; 更新待っていただけて嬉しいです。ありがとうございます! (2021年2月1日 18時) (レス) id: 137c45cd89 (このIDを非表示/違反報告)
ゆぅあ(o・ω・o)(プロフ) - 間違えました!!!!ですけどまた更新待ってます (2020年12月14日 22時) (レス) id: f45915f976 (このIDを非表示/違反報告)
ゆぅあ(o・ω・o)(プロフ) - 来年の三月まで待ってます!! (2020年12月14日 22時) (レス) id: f45915f976 (このIDを非表示/違反報告)
成瀬 - 早く続きが読みたいです!お願い致します (2020年4月22日 11時) (レス) id: 9df39f7e96 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:さくらんぼ | 作成日時:2016年5月8日 12時