08.これはビジネス ページ8
つまらない大人になってしまった。そう自分でも思いながら、淡々と紡がれるのはそんな言葉だ。
けれどこれはビジネスであって遊びじゃない。
無理に『信頼』を得る必要はないんだ。『信用』さえ得られれば。
三日月の笑みに深みが出る。
一周回って無表情に見えるその笑みは、今すぐにでも私を殺してしまいそうだ。
「仕事、か。それはおぬしが命を散らしてまでも守りたいものか。ここでおぬしが逃げたら職を失うかもしれぬが、ここにいればいずれおぬしは死す。例え俺が殺さずともな。仕事だとおぬしは言い捨てるが、それで捨てるのには惜しい命だろう?」
「…………惜しい?」
「ああ。仕事のために命を捨てるなど、おぬしの年齢からして損だと思うが。違うのか」
――――――……ああ。
いま、私は説得されているのか。
なるべく、穏便に帰ってもらえるよう、殺さずに済むよう取り計らっている。
"彼には"私を殺す覚悟がないから。
「……あなたはお優しいですね」
でも、私は優しくないしそんな言葉で説得されるほど、安い思いでここに足を運んでない。
「死ぬ覚悟がなくて、どうして審神者なんか始めるんですか?」
「……なに?」
審神者は仕事のために命を扱うわけじゃない。
――命を、時には捨てる覚悟で歴史を守れる者が、審神者になるんだ。
「力を見出され、見たこともない、あるのかもわからない歴史を守り未来に繋げる……そしてそれはいつも死と隣合わせですよ。時間遡行軍は、刀剣男士を操る審神者を殺したがるものですから」
――……そうだ。
あの日、あの時、時間遡行軍の目的は私だった。
私を殺すことだった。
583人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
黒羽ひみと(プロフ) - 黒無さん» お褒めの言葉ありがとうございます!更新は今しばらくお待ちくださいませ! (2020年9月26日 14時) (レス) id: 451dd01b35 (このIDを非表示/違反報告)
黒羽ひみと(プロフ) - waterさん» ありがとうございます。更新止まってしまいすみません!時間ができ次第再開します。 (2020年9月26日 14時) (レス) id: 451dd01b35 (このIDを非表示/違反報告)
黒無(プロフ) - 素敵な作品ありがとうございます!更新待ってます!! (2020年9月24日 12時) (レス) id: 2b98e9a281 (このIDを非表示/違反報告)
water(プロフ) - 面白い。いい作品に会えて良かったです。更新待ってます。 (2020年9月24日 12時) (レス) id: e941bacba9 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:黒羽ひみと | 作成日時:2020年8月23日 12時