07.三日月宗近 ページ7
ノックの音が部屋に響く。
「……どうぞ」
とりあえず刀は再度布団の下に隠して、正座の姿勢に戻った。
彼がどういうつもりで本体を差し出したのか、いまそれを考えている余裕はない。
「うむ。では入るぞ、人間」
なぜなら、この部屋の外には、既に抜刀している臨戦態勢の刀剣――三日月宗近がいるのだから。
襖が開き、青い衣が姿を見せる。
私の知っている柔和な笑みを浮かべる彼とは裏腹に、その刀剣の顔は貼り付けたように無表情だった。
月を宿した瞳が冷たくこちらを見下ろす。
私は一切立ち上がらず、動かず、姿勢を整えたままそんな彼を見つめた。
「なかなかの猛者のようだな。油断も隙も見えぬから、こうしてわざわざ顔を見せに来てやったぞ」
「そうですか、それはありがたい。目的は同じ歴史を守る者同士、正面切っての話し合いが一番ですからね」
ニコリと笑いかけるのに伴い、三日月は私の首に刃を突き付けた。
「いや、話し合いは不要だ。今すぐこの場から出て行ってもらいたい」
そこで初めて、彼は笑みを携えた。
「無理ですね。これが私の仕事なので。それとその刃を向けるべき敵は、私ではなく時間遡行軍です」
「はは。時間遡行軍よりも、おぬしら人間の方が危惧すべき敵だろう。おぬしがいると仲間が怖がる。俺はあやつらの笑顔を守りたいんだ」
「奇遇ですね。私も『"誰もが笑顔で暮らせる"歴史を守ること』が仕事です。目的は一致していますよ」
ただしそれは、ものすごく空っぽな笑み。
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黒羽ひみと(プロフ) - 黒無さん» お褒めの言葉ありがとうございます!更新は今しばらくお待ちくださいませ! (2020年9月26日 14時) (レス) id: 451dd01b35 (このIDを非表示/違反報告)
黒羽ひみと(プロフ) - waterさん» ありがとうございます。更新止まってしまいすみません!時間ができ次第再開します。 (2020年9月26日 14時) (レス) id: 451dd01b35 (このIDを非表示/違反報告)
黒無(プロフ) - 素敵な作品ありがとうございます!更新待ってます!! (2020年9月24日 12時) (レス) id: 2b98e9a281 (このIDを非表示/違反報告)
water(プロフ) - 面白い。いい作品に会えて良かったです。更新待ってます。 (2020年9月24日 12時) (レス) id: e941bacba9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:黒羽ひみと | 作成日時:2020年8月23日 12時