42.いらない ページ42
「では、私は運びに行くことはできないので、あとはよろしくお願いいたします。初めての食事なので、ゆっくり食べるようにだけ伝えてください」
料理が完成して、運びに行く二人に向かって伝えた。
燭台切は穏やかな顔で笑う。
「わかったよ。君も、自分の分はいらないと言ったけど、用意したんだからしっかり食べてね」
「……本当にいらなかったんですが、厚意は受け取っておきます」
机に置かれた一人分の食事を見て、渋々頷く。
燭台切は満足したようににっこり笑って、三日月を伴い厨房から出て行った。
一人になって、どっと疲れが襲ってくる。
朝から畑仕事をして、料理をして、時刻はもう三時を過ぎている。
昼食とするには中途半端な時間だ。
燭台切には、明日以降は共に料理をしてくれそうな刀剣男士に援助を求めてほしい。と、伝えたが……どうなることやら。
椅子に腰掛け、まずは一息。料理に手を付けた。
「あ、美味しい……」
途中から、燭台切はなにか勘が働き出したのか、教えなくても自分で動くようになった。
だから、これは燭台切光忠の作る料理の味だ。
おもてなし心に優れた、優しい味わい。
「……っ……」
あ、駄目だな。これは駄目だ。
"やっぱり"、駄目だった。
だから「いらない」って言ったのに。
「苦しくて、苦しくて……食べられないな……」
なんでだろう。なんで守れなかったかなあ。
――私は、『これ』を守りたかったはずなのに。
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黒羽ひみと(プロフ) - 黒無さん» お褒めの言葉ありがとうございます!更新は今しばらくお待ちくださいませ! (2020年9月26日 14時) (レス) id: 451dd01b35 (このIDを非表示/違反報告)
黒羽ひみと(プロフ) - waterさん» ありがとうございます。更新止まってしまいすみません!時間ができ次第再開します。 (2020年9月26日 14時) (レス) id: 451dd01b35 (このIDを非表示/違反報告)
黒無(プロフ) - 素敵な作品ありがとうございます!更新待ってます!! (2020年9月24日 12時) (レス) id: 2b98e9a281 (このIDを非表示/違反報告)
water(プロフ) - 面白い。いい作品に会えて良かったです。更新待ってます。 (2020年9月24日 12時) (レス) id: e941bacba9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:黒羽ひみと | 作成日時:2020年8月23日 12時