28.相容れぬ ページ28
三日月の答えを待った。彼はただ静かにその言葉を口にする。
「わからなくてもいいことだ」
「なっ……」
絶望を感じさせる表情を一期は浮かべた。その返答にはそれだけの拒絶があった。
一期は首を横に振り、一歩後退り、続けて二歩、三歩と後退り、瞼を閉じる。
長い間握り締めていた柄から手を離し、マントを翻した。
「……あなたの考えはわかりました。相容れぬ、ということがはっきりと」
一期は背を向け歩き出した。
声をかけようと口を開いたとき、おもむろに一期の方からこちらを振り返った。
「いま、三日月殿と敵対すれば私は負けます。なので引かせてもらいますが、あなたが弟たちに害を与えればその時はどんなことをしてでもその首を下ろす。肝に銘じておいてくだされ」
「……承りましょう」
もちろん害を与える気なんてサラサラないが、あの様子だと傷一つ付ければ即殺されるだろう。
さすがにそれは勘弁願いたいため、いまはこの幸運に甘えて口を閉ざす。
最後悲しそうな目で三日月を見ると、一期は御殿へと帰っていく。
その背中を見届けて、三日月に問いかけた。
「よかったのですか」
「なんのことだ」
「あなた方は『仲間』でしょう」
私の言葉に、三日月ははたと目を見開く。
それから「仲間か……」と、ひとり呟き遠くの空を見上げた。
お日様はすっかり頭の上に昇り、お昼時だ。
「……昼食にしましょうか」
余計な口出しをしたと反省する。
この本丸の刀剣たちのことはわからない。三日月もきっと教える気はない。聞いたところでできることもない。
ついつい気になってしまうが、必要以上に関わらないと決めたのだ。
三日月と一期の問題も……私の関与するものではない。
583人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
黒羽ひみと(プロフ) - 黒無さん» お褒めの言葉ありがとうございます!更新は今しばらくお待ちくださいませ! (2020年9月26日 14時) (レス) id: 451dd01b35 (このIDを非表示/違反報告)
黒羽ひみと(プロフ) - waterさん» ありがとうございます。更新止まってしまいすみません!時間ができ次第再開します。 (2020年9月26日 14時) (レス) id: 451dd01b35 (このIDを非表示/違反報告)
黒無(プロフ) - 素敵な作品ありがとうございます!更新待ってます!! (2020年9月24日 12時) (レス) id: 2b98e9a281 (このIDを非表示/違反報告)
water(プロフ) - 面白い。いい作品に会えて良かったです。更新待ってます。 (2020年9月24日 12時) (レス) id: e941bacba9 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:黒羽ひみと | 作成日時:2020年8月23日 12時